産地レポート
私たちの郷土の味、北之庄菜を、ぜひ、味わってください。
葉っぱも根っこも、郷土の味がする
厳しい寒気の中、滋賀県近江八幡市北之庄地区では、特産の北之庄菜の収穫が続いています。
「北之庄菜は、江戸時代から作られてきました。このあたりは水郷地帯ですが、畑地の一角で、漬物やおかずにするために、葉物野菜や根菜を作っていました。
その中で、この土地特有の野菜として北之庄菜が生まれました。粘土質の粘りの強い土で育てるうちに、独特の形と味の野菜ができました。『菜』と名前がついていますが、カブの仲間です。根の部分だけでなく、葉っぱまで食用にでき、利用価値が高いんです。」
北之庄郷の会会長の大西一幸さんは話します。
一度は絶滅しかかったが、奇跡の復活
北之庄菜は、昭和30年頃まで作られていましたが、作り手がいなくなり、一度は途絶えてしまいました。
食生活の変化、そして農業環境の変化などが原因でした。
「平成10年頃に北之庄菜を復活させようと種を捜していたところ、種を販売していたたばこ屋さんのたんすの引き出しから、マッチ箱に入れられた種らしきものが一つまみ出てきました。これをまいたところ5株だけ北之庄菜が生えてきたのです。」
まさに『奇跡の復活』。北之庄の農協青壮年部が生産を受け継ぎ、少しずつ栽培面積を増やしてきました。
濃厚な「土の味」がする
「8月下旬から9月いっぱいまで、1週間ごと時期をずらして種をまきます。これを11月中旬から2月にかけて収穫していきます。
乾燥させて漬物にしたり、大根おろしのようにおろしてもおいしいです。水分が少なく、身が締まっていますので、甘み、辛みが強く、鍋物にもいいですね。
小さなものは浅漬けにもできますし、葉も漬物になります。大きなものは、おろし、煮物、焚き物。本当に無駄のない野菜です。」
と、生産者の西川竹男さん。
手間暇かけて作り、特産の味を守り伝えていく
しかし当地だけにしかない野菜を守り育てていくのは、とても大変なことです。
「収穫と並行して種取りを行います。収穫時に形のよい株を選抜・植え替えを行い、春に採種します。しっかり選別して純粋な北之庄菜だけを残すようにしています。」
「種子をつけるため、ミツバチに受粉させるのですが、他のアブラナ科の植物の花粉が付くと、すぐに交雑してしまいます。大根のような大きな根が実ったり、白菜のようになったり。不安定なんです。」
交雑でできた白いかぶらを引き抜く。
手間がかかる分、北之庄菜にかける生産者の思い入れはひとしおです。
「地元の小学校の給食にも北之庄菜が出るようになりました。教材にもなりました。私たちが生まれ育った土地の名前がついた北之庄菜ですから、これからもずっと作り続けていきたいですね。」