産地レポート2
ビワマス養殖。より自然に近く、より安定的に。
「いつでもビワマスを食べたい」という要望に応えるために
ビワマスは、漁のほかに、養殖も行われています。
滋賀県長浜市の「鮎茶屋かわせ」は、3年前からビワマスの養殖を手掛けています。
川瀬利弥社長は話します。
「私どもは滋賀県淡水養殖漁業協同組合の一員として、鮎の養殖を続けてきました。私の店の売り物は鮎ですが、琵琶湖の固有種ビワマスの料理も大変人気があります。でも、ビワマスは『いつでもあります』とは言えません。月夜の晩は、ビワマスは捕れないと言いますし、天候不順で船が出せないときや不漁のときもあります。また禁漁期間もありますから。お客様に、いつでも『琵琶湖ならではの味』をお出ししたい、と養殖にチャレンジすることにしたのです」
水産試験場では23年前からビワマス養殖の研究を続けてきました。そして養殖が可能な稚魚の開発に成功し、2010年から養殖業者を募集。河瀬社長もこれに応募されました。
「鮎の経験があったから、養殖技術には自信がありました。問題は、ビワマスの養殖がコスト的に引き合うかどうか。成長スピードの問題がありました。手間暇でいえばむしろ鮎よりも楽な感じですが、デリケートな魚なので今も試行錯誤の最中です」
ビワマス本来の味わいを追及していく
伊吹山を東に見る姉川の河川敷に河瀬さんの養魚場はあります。
「地下水を引いています。水温は年間を通じて14.5度。ビワマスは警戒心が強いんです。ニジマスなどは餌をやろうとすると寄ってきますが、ビワマスはさっと逃げてしまいます。
用事のないときはなるべく近づかないようにしています」
養殖のビワマスと、天然のビワマスは、ひれの先端が丸いか(養殖)、とがっているか(天然)で区別がつきます。
「味はそん色ないと思います。脂分の多い餌を与えれば、こってりした身に育ちますが、それはビワマス本来の味ではありません。自然環境に近い餌を与えることで、本来の味わいに近づけることができます。大阪のシェフを招いて試食いただいたときも『クセがない』『脂の乗りが適度で良い』と好評でした」
「かわせ」では養殖のビワマスが出せるようになって安定的にビワマス料理が提供できるようになりました。
「お盆にビワマスを食べたいというお客さんが多いので、喜んでいただいています。刺身、焼き物などの他、なれずしも好評です。これからも味、品質を向上させて、よりおいしいビワマスをご提供します」