産地レポート
琵琶湖の環境あってこそのビワマス漁です。
ビワマス漁は「守りながら捕る」
琵琶湖固有の淡水魚ビワマスは初夏から夏にかけて脂がのり、旬を迎えます。滋賀県高島市マキノ町の百瀬漁業協同組合では、この時期、早朝に船を出してビワマスを水揚げしています。
「朝4時に船を出して、前の晩に仕掛けたコイト(刺し網)を上げていきます。2時間ほどで終わります。ビワマスは深めの水域にいるので、10m位の深さに網を下します。網の高さは6~7mくらい。長さは20~25m。これを5~6枚つなげます。もっと長い網を使えばたくさん捕れますが、水産資源を守る意味から大きさに制限があります。網の目も大きくして、小さな魚がかからないようにしています」
78歳になる野崎吉平さんはいいます。
組合長の平山次夫さんが続けます。
「今年は鮎の数も少ないので、鮎を餌にするビワマスも不漁ですね。1日10kgも揚がれば良い方です。自然の魚には漁獲量に波があるのは仕方がないところです」
ビワマスの漁は9月いっぱいまで。10月、11月は禁漁期に入ります。
ビワマス漁は水産資源を「守りながら捕る」漁なのです。
琵琶湖の環境が何より大切です
水揚げしたビワマスは漁協を通じて料亭などに出荷されます。絶対量が少ない上に、鮮度が命の魚なので、食べることができるのは実質的に滋賀県内に限られます。
「刺身にすれば、他のサケ・マス類とははっきり違うことが分かります。脂っぽくないし、さらっと食べやすいんです。その上、うま味もあります。取れたての刺身が一番ですが、寿司ネタとしても良いですし、煮つけにしても美味しいです。我が家では煮つけにすることが多いですね」
と、野崎さん
今、漁協が抱えているのは後継者問題。平山組合長は話します。
「組合員の平均年齢は70歳近くになっています。最高齢は87歳。漁業の後継ぎ問題が悩みの種ですね。今、35歳の若手が一人います。この人に手ほどきをしているところです。漁業の伝統を伝えていくのも私らの仕事です」
さらに、琵琶湖の環境問題も重要です。
「ビワマスは滋賀県漁業協同組合連合会の高島事業所で育てた稚魚を放流していますが、環境が悪くなっては稚魚も育ちません。琵琶湖の環境が守られてこそ、ビワマス漁も成り立ちます。これからも環境のことを忘れずに、漁を続けたいと思います」
平山次夫組合長(左)と野崎吉平さん(右)