2017年7月の特集 黒枝豆【産地レポート】黒枝豆
今年から『滋賀県産黒枝豆 能登川黒ダイヤ』の名で能登川周辺の直売所と量販店で販売される黒枝豆。
平成26年、JAグリーン近江能登川支店のミニ産地づくりの取り組みで黒枝豆の栽培が始まり、平成28年には能登川の9戸の生産者さんが参加、約1.2haの栽培面積で黒枝豆が栽培され出荷されました。
枝豆よりも味が濃く、甘みのある黒枝豆は、7月から10月の間に収穫され、直売所「きてか~な」やスーパー平和堂の一部店舗で販売。まだまだ滋賀でしか手に入らない希少品です。
今回、「中洲営農組合」さんの栽培圃場畑にお邪魔して黒枝豆についてのお話を伺いました。
「中洲営農組合」の皆さん。左から時計回りに、熊﨑博英さん、市田健二さん、仲西和彦さん、熊﨑重綱さん、石井哲夫さん。取材時に欠席されていたのが今井照久さん。
5月に法人化。黒枝豆作りに本格的に挑戦。
今年5月に農事組合法人「中洲営農組合」としてスタートしたばかり。6人の生産者さんがまとまって1つの生産者団体として活動されています。そして、その6人のうち5人は、学年は違いますが小・中学校の同窓生で団結力のある生産者チームです。そんな生産者さんたちが能登川のブランド野菜にしたいと取り組んでいるのが黒枝豆。ぷっくりとしたサヤには通常の枝豆よりもひとまわり大きな豆が入っています。豆は黒いというよりはやや紫がかった色で、甘みが強く、濃い味わいが特徴。今年から、公募で決まった「滋賀県産黒枝豆 能登川黒ダイヤ」の名で店頭に置かれます。
転作用の大豆を生産していた強みを活かして。
「そもそもなぜ、能登川で黒枝豆が作るようになったのでしょうか?」と素朴な疑問をぶつけてみると、「黒枝豆は黒大豆になる前の未成熟の実を収穫します。この辺り一帯は転作で大豆を栽培する生産者が多く、栽培法を知っているため黒大豆に馴染みやすかったからです」とJAグリーン近江の澤さん。さらに野菜の栽培に適した土地であることも大きな理由。
「昔、ここ能登川一帯は、大中の湖と小中之湖という湖があって、それを干拓し水田になったんですよ。だからヨシや藻等がたい積してできたスクモと呼ばれる肥沃な土が広がり、砂がちょうどよい具合に混じって、水はけもよく、野菜づくりに適しているんです。」栽培に最適な条件が重なり、黒枝豆栽培の挑戦が始まりました。
たわわに実る黒枝豆。収穫時はもっとぷっくりと大きいサヤに。
サヤは黒ではなく、鮮やかな緑色。
中耕の回数を増やして、ひたすら除草。
黒枝豆の栽培は4月の種まきからスタート。品種は、夏場収穫できる「たんくろう」を中心に、「早生黒大豆」「丹波黒大豆」の種を順次まいて、7月末までにはまき終えます。まいてから約30日後に畝(うね)を立て、株の元に土を寄せる中耕という作業を行い、これから育つ枝を安定させる1回目の中耕(浅く耕すこと)と土寄せを行います。
通常、中耕の作業は収穫まで4回ぐらいですが、「中洲営農組合」では今年9回も行っています。「なるべく除草剤を使わずに草を取り除きたいので、追肥や除草の際にも中耕をしています。草が生えてくると害虫が出てきて、サヤに虫食い跡が残るんで見た目も悪くなるんですよ」と熊﨑博英さん。畑にはほとんど雑草がなく、きれいに土が盛られた手間暇かけた畝が立っていました。
草のないきれいな畝。ほぼ2週間に1度、中耕作業をしている。
黒枝豆には小さく白い花が咲きます。
花が咲いた後に実がなり、成長して黒枝豆に。
手間暇をかけて袋詰めに。
収穫は、「たんくろう」が7月初旬から8月末まで。「早生黒大豆」「丹波黒大豆」は9月下旬から10月中旬頃まで。天候が良いと生育が早く、収穫が追いつかないことも。収穫後は、機械で枝からサヤを落とし、洗浄し選別に入ります。
選別は手作業と機械選別で、特に手作業の選別では能登川ブランドとして確認するため、虫食いやサヤの中に1粒しかないものなどは、どんどん外していきます。プロの目で選別されているので、袋入りを買うだけで美味しい黒枝豆が手に入ります。しかも今年から電子レンジで加熱できる袋になるため、食べるときも手間いらず。
「黒枝豆の美味しい食べ方はありますか?」と尋ねると、6人が全員口を揃えて「塩茹でやな」と。サヤの両端を切り落として塩をサヤ全体に行き渡らせながら湯がくのがポイント。シンプルな食べ方ですが、黒枝豆の美味しさが一番引き立つ食べ方で、ビールとの相性も抜群。甘みが強く、濃い豆の味とホクホクの食感は、食べ出すととまらないそうです。
JAグリーン近江の澤さん(上段左)と二人三脚で黒ダイヤの特産化を盛り上げていきます。
美味しい黒枝豆を作って、地元に貢献。
「これからは作付面積をもっと増やし、自動でサヤを取れる機械を入れ、選別のための人を増やしたいですね。黒ダイヤの出荷数を増やしてたくさんの人に食べて欲しいです」と熊崎博栄さん。納涼大会や「あったかサロン」など地元の人たちに黒ダイヤを無償で配布して食べてもらっているそう。地元で育った生産者さんたちは黒ダイヤの栽培を通して地域にも貢献していきたいと意欲満々です。ダイヤのように輝く存在を目指して、息の合ったチーム力で挑み続ける「中洲営農組合」のみなさんでした。