2016年12月の特集 小佐治(こさじ)のもち【産地レポート】小佐治のもち
きめ細かくてコシがあり、面白いほどよく伸びる小佐治(こさじ)のもち。
おいしさ日本一のもち米「滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)」
の産地とも言われる甲賀町で、この美味しいもちを使って
集落で町おこしを始めた「甲賀もち工房」の皆さん。
米の消費拡大を目指し、創意工夫を凝らした活動が全国的にも注目されています。
代表の河合定郎さんにお話を伺いました。
つやつやと輝く出来立てのもちは、きめ細やか!
風味豊かなよもぎが入った「よもぎ餡もち」は人気商品
ずらりと並んだ出来立てのもちはつやつやピカピカ!まさにうっとりするようなもち肌です!!取材日はお歳暮シーズン前の繁忙期。工房の中はもち米が蒸し上がる良い香りに包まれています。年末の多いときにはなんと、1日8俵(480kg)のもち米が使用されるそうです。
湯気とともに出来立てのお餅がずらり!
「杵つき」製法でコシのあるもちに
もちを作る方法には「杵つき」「ミキサー」「練り出し」の3種類がありますが、ここでは昔ながらの「杵つき」製法にこだわっています。もちをつくときに空気が入ると気泡ができますが、この気泡が多いと、焼いたときに中身が飛び出しやすくなるのです。「杵つき」製法は、気泡ができにくいのでコシのあるもちに仕上がります。
重粘土質な土壌の特性を生かして、良質なもち米を生産
この辺りはかつて「佐山湖」で、現在の琵琶湖のように雄大で静かな湖でした
甲賀の地は260万年もの昔、「佐山湖」と呼ばれる古琵琶湖でした。小佐治地区にはこの佐山湖時代に湖底に深く堆積した重粘土質の土壌が残っています。この独特の土壌を地元では「ズニン」とか「ズリン」と呼ぶそうです。
ミネラルがたくさん入った青みがかった粘土の土壌
湖底だった証に田んぼの土から大きな貝殻の化石が発掘されています
「ズニン」をたくさん含んだ土は粘っこく農作業は大変困難ですが、土壌の地力が高く、ミネラルも豊富なので、粒張りの良い美味しいお米が収穫できます。小佐治地区の土壌は、全国に約80種類あるもち米の品種の中でも最高評価を受けている「滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)」との相性も抜群で、この地ならではの良質なもち米が生産できるのです。
また、滋賀県の「環境こだわり農作物(※1)」にもいち早く認証され、平成25年度からは県が推進する「魚のゆりかご水田プロジェクト」にも積極的に参加。メダカやドジョウ、タニシなどの生き物が棲む昔ながらの水田の中で安心安全な米作りを行っています。
生産から加工・販売まで おもちを使って町おこし!
出来立てのもちを手にする「甲賀もち工房」代表の河合定郎さん
「もちを特産品に!」を合言葉に、集落で一丸となって立ち上げた農業法人が「甲賀もち工房」です。小佐治のもちを世に広め地域を活性化させようと、もち米の生産管理から、もちの製造・加工まで地元で一貫して行っています。
一つひとつ手作業で加工されています
「忍者もち」など甲賀ならではの商品も販売
10年間におよぶその活動は、農業の6次産業化の草分け的存在として全国的に知られるようになり、最近では海外からも視察にこられるそうです。
(「6次産業」とは、農林業(1次産業)と製造業(2次産業)、小売業(3次産業)を組み合わせた新しい経営形態を指す)
また、平成27年度には、滋賀県が選定する「ココクール マザーレイク・セレクション(※2)」にも選ばれ、新たなファン層も広がっています。
アイデア商品で米の新たな可能性も提案
米粉ともち米を95%使った米粉うどん「近江米めん」
「甲賀もち工房」ではもち米だけでなく、米の消費拡大と普及も目指しています。そこでご飯以外の食べ方で米をもっと消費できるよう、米粉を使った加工品の開発にも着手。米粉(うるち米)ともち粉を95%使用した米粉うどん「近江米めん」は、つるつるもちもちでのど越しが良く、腹もちのよい麺です。小麦を使っていないのでアレルギーの方でも安心して食べられると人気です。
もっちり食感ながらパリッと香ばしい「米粉たい焼き」
ウインナーやチーズも入って朝食にぴったり!
店頭で販売されている「米粉たい焼き」は米粉を使った生地がほんのり甘く、パリッとしてとても美味しい!中に挟まっている具材も普通とはひと味違います。よもぎもちが入った「満腹たい焼き」や、目玉焼き・ウインナー・チーズなどが入った「朝食たい焼き」なんて変わり種も!皮の甘みと塩気が絶妙の組み合わせで、新しいスタイルのお米を使ったファーストフードです。
米やもちの消費量を増やすべく新メニュー開発にも積極的
「目新しいメニューを増やさないと飽きられてしまうからね」と笑う河合さん。他にも「米ジャム」やパイ生地によもぎもちが入った「もちパイ」など、米の新たな可能性を求めて河合さんたちの創意工夫はつきません。
もちにはどうしても冬のイメージが強く、夏と冬では販売量に8倍もの差があるそうです。工房を安定経営していくためにも一年を通してお客さんに来てもらうことが重要になるようです。「米粉を使ったから揚げはサクッとして美味しいですよ!米やもちの良さを見直してもらって、地域だけでなく日本全体が活性化していけたらいいですね」と前を見つめながら力強く話してくれました。
- (※1)環境こだわり農産物とは?
- 農薬・化学肥料の使用量を通常の栽培の半分以下に減らすとともに、農業濁水の流出防止など、琵琶湖をはじめとする周辺環境に配慮して栽培されたことを滋賀県が認証した農産物のことです。滋賀県では「環境こだわり農産物」の生産振興と消費拡大に向けたPRを積極的に取り組んでいます。
- (※2)ココクール マザーレイク・セレクションとは?
- 滋賀ならではの資源や素材を活かし、心の豊かさや上質な暮らしぶりといった滋賀らしい価値観を持つ商品やサービスを「選び」「魅せる」ことで、その良さを発信する滋賀県の取組。