産地レポート

トップページ産地レポート11月の特集 伊吹平核無柿 産地レポート

トップページ産地レポート11月の特集 伊吹平核無柿 産地レポート

2016年11月の特集 伊吹平核無柿(いぶきひらたねなしがき)【産地レポート】伊吹平核無柿

その名の通り、平たく四角い形で種がないのが特徴の平核無柿(ひらたねなしがき)。
上品な甘さで根強いファンも多く、種を取り出す必要もないので
非常に食べやすく、子どもにも大人気!
でも、実は渋柿なんです。
こだわりの栽培法や新たな取り組みについて
伊吹果樹組合のみなさんにお話を伺いました。

伊吹山の山麓で60年以上前から育てられてきた「伊吹平核無柿(いぶきひらたねなしがき)」

自然豊かな伊吹山のふもとで手間ひまかけて生産されています
自然豊かな伊吹山のふもとで手間ひまかけて生産されています

なめらかな食感と独特な旨味が特徴で根強いファンも多い『伊吹平核無柿(いぶきひらたねなしがき)』。伊吹山のふもとに広がる春照野(すいじょうの)に戦後の食糧難を克服するため生産が始まったとされています。伊吹町(現・米原市)では昭和27年に国の事業の一環で平地林を開墾し、サツマイモなど風土にあった作物が作られるようになりました。

今年度から米原市のふるさと納税返礼品にも取り入れられている平核無柿
今年度から米原市のふるさと納税返礼品にも取り入れられている平核無柿

平核無柿もそのうちのひとつです。昼夜の温度差が大きい伊吹では柿の甘みが一段と増し、伊吹の柿が特産品として世間に広まりました。伊吹山を望む豊かな自然に恵まれた環境で、平核無柿は手間ひまかけて生産されています。

生産には様々な苦労があり、生産者は減少の一途

一つひとつ手作業する伊吹果樹組合長の瀧澤さん
一つひとつ手作業する伊吹果樹組合長の瀧澤さん

良い果実を収穫するために、剪定と摘蕾(てきらい)、摘果(てきか)は欠かせません。これらはほとんど手作業で、とても手間暇がかかります。「新芽がでるころに遅霜がおりると花が咲かなくて全滅することもあってね。こればかりは防ぎようがないんだけど...」と苦笑いする瀧澤さん。実は瀧澤さんの畑でも今年は遅霜に見舞われた木があったようです。

除草剤や農薬を半分以下に減らし、自然豊かな環境の中で育っています
除草剤や農薬を半分以下に減らし、自然豊かな環境の中で育っています

農薬も通常の半分以下に減らすなど環境にもこだわり、滋賀県の「環境こだわり農産物(※)」としても認証されています。広い園内の草刈りも機械や手刈りで行い、作業中に虫を見つければこまめに手で取ることも。「草刈りした直後は柿の木の下で伊吹山を見ながらお弁当を広げてピクニックする人もいたりしますよ」と瀧澤さん。たしかに柿の下にお花畑が広がる園内はとてものどかな風景です。

この柿は収穫まであと少し!
この柿は収穫まであと少し!

カラーチャートを使って収穫のタイミングを確認することも
カラーチャートを使って収穫のタイミングを確認することも

収穫前の時期にすでに赤くなっていたり、落ちたりしている実は虫の被害にあったもの。順調なら1本の木に100~200個もの実がなりますが、その陰には生産者さんたちの並々ならぬ努力があるのです。

伊吹果樹組合とJAレーク伊吹、米原市、湖北農業普及指導センターのみなさん
伊吹果樹組合とJAレーク伊吹、米原市、湖北農業普及指導センターのみなさん

「より美味しい柿を届けたい!」と収穫は色味具合がよくなるギリギリまで行いません。ただ、その分どうしても食べられる期間が短くなってしまいます。最盛期には230戸の生産者で25haあった果樹畑は、高齢化やリタイヤにより現在では26戸、4.5haにまで激減。「次世代へどう繋げていくかが今後の課題」と伊吹果樹組合のみなさんは話します。

新たな挑戦で付加価値のある柿へ

すべての柿に一つひとつ袋をかぶせていく気の遠くなるような作業です
すべての柿に一つひとつ袋をかぶせていく気の遠くなるような作業です

『伊吹平核無柿』を絶やすことなく、伊吹の特産品としてもっと盛り上げようと新たな取り組みも始まっています。そのひとつが「樹上脱渋(じゅじょうだつじゅう)」です。通常、渋柿である『伊吹平種無柿』は、収穫してから炭酸ガスを充満させた施設で脱渋処理を行い出荷されますが、「樹上脱渋」は木になっている実に固形アルコールを入れた袋をかぶせて脱渋します。そうすることにより、実に黒いゴマ(※)が入り黒砂糖のようになります。
(※)酸化し不溶性に変わったタンニンが黒くなった斑点のようなもの

左が「樹上脱渋」して甘みが凝縮された柿
左が「樹上脱渋」して甘みが凝縮された柿

通常の柿と並べて切ってみるとその違いは一目瞭然!取材チームからも思わず「おぉ!」と歓声があがるほど。食感はシャキシャキと少し固くなり、甘みがぎゅっと凝縮されています。実は大玉になり、食べられる期間も倍以上になるそうです。この「樹上脱渋」した柿は『霊峰柿』(れいほうがき)として新たなブランド化が進められ、2017年からの販売を予定されています。

ただこれまでは渋味があることで獣害にあいませんでしたが、樹上で甘くなると獣害にあう可能性は否めません。ひとつずつ袋をかぶせる手間や管理を考えると、これは幻の高級柿としての価値がありそうです。

「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざもあるように、柿は昔から日本人に愛され親しまれてきた国民的フルーツ。ぜひ旬の味覚を味わってください。

環境こだわり農産物
  • (※)環境こだわり農産物とは?
  • 農薬・化学肥料の使用量を通常の栽培の半分以下に減らすとともに、農業濁水の流出防止など、琵琶湖をはじめとする周辺環境に配慮して栽培されたことを滋賀県が認証した農産物のことです。滋賀県では「環境こだわり農産物」の生産振興と消費拡大に向けたPRを積極的に取り組んでいます。

「環境こだわり農産物」について詳しくはこちらから