産地レポート
【生産者・販売者レポート1】
生産者が語る!日野菜の味は「里の娘の胸のうち」。
「今でこそ、伝統野菜と言われているけど、昔は普通の野菜。500年間ずっと食べ続けられてきたということは人々の間で支持されてきたということです。日野菜はそれほど魅力のある野菜なんですよ」とおっしゃるのが日野菜を愛する生産者の寺澤清穂さん。
「母親がつくる日野菜のぬか漬けが美味しくて、自分でも作ってみたい」、そう思ったのが栽培を始めるきっかけで、もう40数年も作り続けています。
「日野菜は不思議なことに10人作れば10人とも味の違う日野菜ができる。土地、気候、温度、湿度などさまざまな条件で味が微妙に違ってくる」と。日野菜って、どんな味ですか?と期待感いっぱいでお聞きすると、「日野小唄って、歌があるんやけど、2番の歌詞に日野菜のことを“里の娘の胸のうち”と歌われている。娘の心のように日野菜の味も移り気であるってことやな」と、寺澤さん。表現しきれない微妙に違う味わいは、その時々に採れる日野菜の楽しみ方でもあるようです。一般的に日野菜の味は、淡泊な味わいの中に辛みと苦みが効いているのが特徴で、滋賀の言葉では「たた辛い」と言われています。特に、12月、1月は辛みと苦みがあり、日野菜らしい味が出てくるそうです。
500年以上の歴史をもつ伝統野菜「日野菜」のお漬物
冬が旬の日野菜。「JAグリーン近江(日野東支店)」の福井美智子さんに、日野菜のお漬物についてお聞きしました。
「日野菜は、その名の通り日野町を発祥地とするカブラの一種です。その歴史は古く、約500年前の室町時代から始まったとされるお漬物で、現在では、さくら漬けの名で親しまれています」。日野町で作られる日野菜のお漬物は、主に日野町及びその近隣で販売されています。「日野町では、農家さんだけでなく、畑をお持ちのご家庭のほとんどが9月中旬になると原種をまかれます。そして、11月に入ると収穫し、それぞれ軒先などで天日干しにして、ぬか漬けを作られます。そんな様子も日野町ならではの風物詩と言えるでしょう」と福井さん。また最近は、サラダ感覚で食べられる漬け方など、それぞれの"家庭の味"を楽しむ人が増えてきています。
1本1本、手作業で作る日野菜の甘酢漬け
「JAグリーン近江」が加工している日野菜のお漬物は3種類あります。甘酢漬けの「ひのなゑびす漬」、日野菜のぬか漬け、そして新商品の「ピクルス」です。
主力の甘酢漬けは、27年前、京都に漬物の材料として日野菜を出荷していたところ、滋賀県でも生産できないか?また、規格外品を漬物に利用できないか?サラダ感覚で若い人に食べてもらえないか?という思いがきっかけとなって女性や子供でも食べやすい甘酢の漬物加工を始めたそうです。
「実は今でも、日野菜の漬物は大半が手作りです。赤紫色の首の部分は、1本1本包丁で硬さを確認しながら切り落としています。ジャリっとした感触で包丁が入ると使えません。スッと包丁が入って、やわらかく切れる部分まで見極めながら切り落としていきます」とJAの福井さん。
これら日野菜の甘酢漬けは「ファーマーズマーケット きてか~な」をはじめ、県内の一部のスーパーマーケットなどで販売されています。県外ではまだ、ごく一部でしか販売されていませんが、JAグリーン近江日野東支店に電話すれば郵送もしてくれるそうです。
※日野菜のお漬物に関するお問い合わせは、JAグリーン近江(日野東支店) 0748-52-2212
「たた辛い」、日野菜本来の味を楽しめる冬
「「野山が色づき、木枯らしが吹く頃になりましたら、ぜひとも日野菜のお漬物を食べて欲しいですね。特に冬場は、たた辛い(辛み・苦みのあること)本来の日野菜の味が楽しめます。葉っぱも寒さで風味が増し、深みのある味わいになるので、美味しいですよ。夏は夏で、さっぱりとした味わいになるので暑い夏に食べやすいんですよ」とJAの福井さん。地元のご家庭では、そのままお漬物として食べることが多いですが、地元のお寿司屋さんでは日野菜を使ったお寿司やちらし寿司を食べることができるそうです。
夢は、新商品「日野菜ピクルス」の海外展開
イベントでは、日野菜の甘酢漬けのほか、試作中である日野菜のピクルスも販売されていました。2年前から開発に取り組んできた「JAグリーン近江」の新商品です。漬け物の需要が少なくなってきたため若い人にも、もっと気軽に食べてもらいたい、という願いがこめられています。まずは県内で日野菜を普及させてから、全国へ、そして、海外へ、日野菜を広めていきたいという大きな夢があります。
【生産者・販売者レポート2】
草津の名産!まるごと1本使った山田ねずみ大根の古漬けと草津メロン粕漬け
小ぶりで下ぶくれのユーモラスな形の山田ねずみ大根。葉っぱごとぬか漬けにする古漬けが、長い間親しまれている滋賀の伝統野菜です。「味がしっかりとのって、きめ細やかな肉質がしっとりとした味わいで、漬物に向いているんですよ」と、JA草津市の農産部・青木さん。漬物好きには、この古漬けの昔ながらの麹の辛さが素朴で味わい深いそうです。
草津市はメロンの産地でもあるので、摘果メロンを使った「草津メロン粕漬け」も作られています。そのため、見た目も味も「これ、メロン?」って不思議に思うくらいしっかり漬かり、ウリのような食感で、奈良漬けのような味が楽しめます。
【生産者・販売者レポート3】
お漬物日本一決定戦T1グランプリで優勝した「まぜちゃい菜®」
「滋賀は野菜の生産が盛んで、品種も豊富です。その豊富な野菜を使った漬物も数多く県内にはあります。パン食が進み、お米の需要が減ってきて、それにともない漬物を食べる人も少なくなってきたので、多くの方に漬物を食べていただきたいです」。そうおっしゃるのが滋賀県漬物協同組合(12社)の高木(農事組合法人近江農産組合)さん。おすすめの滋賀県の漬物を高木さんに教えていただきました。滋賀の大津市にある『おつけもの丸長』の“まぜちゃい菜®”。「2014年にお漬物日本一決定戦T1グランプリで優勝した商品なんですよ。伝統野菜の日野菜の根を中心に、きゅうり、青トマト、青唐辛子、青しその葉などを混ぜて、ピリッとする辛みに仕上げたごま風味のお漬物です。おにぎり、ご飯、炒飯、パスタなど、どんな料理にも混ぜるだけで、美味しく召し上がれますよ」。この“まぜちゃい菜®”、メディアでも多数紹介されるほど、滋賀の人気のお漬物だそうです。
イベントレポート
今回のレポートは、2016年1月23日、「イオンモール草津」のセントラルコートにて開催された、滋賀県初企画の「滋賀のお漬物博」にお伺いし、近江のお漬物について、生産者さんや加工業者さんにお聞きした内容をまとめたものです。
滋賀県初企画のお漬物イベントで漬物文化や歴史に触れて欲しい
「今回、県が主催する漬物についての初めてのイベントです」と語るのは、滋賀県農政水産部 食のブランド推進課・村田さん。滋賀の伝統野菜や地域の特産野菜など「近江の野菜」を使ったお漬物をもっと知ってもらおうと、“お漬物博”を企画されました。
会場内には、県内8団体(JA、農産物直売所、漬物協同組合)による商品販売をはじめ、滋賀県内の漬物の展示、漬物の歴史や食文化がわかるパネル展示などが行われ、滋賀のお漬物について深く知ることのできるイベントでした。
お昼には滋賀県知事による挨拶もあり、初回とは思えぬほどの大盛況ぶり。大勢のご家族連れや主婦の方が、試食を楽しみながら近江野菜の漬物文化や歴史にふれるひとときとなりました。