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1月の特集 ふなずし

琵琶湖固有のニゴロブナと上質な近江米、滋賀県を代表する食材から生まれる「ふなずし」。人々に古来より愛され、作り継がれる「ふなずし」は、一度食べたらとりこになる旨みあふれる発酵食品です。珍味としても有名!?そんな「ふなずし」の魅力に迫ります。

熱狂的ファン多数!「ふなずし」とは?

ふなずし
「ふなずし」はハレの日に食されるごちそう。

ふなずしの味わいは、一切れ箸でつまみ、口に運ぶところから始まります。
まず、チーズにもたとえられる発酵食品特有の芳醇な香りが鼻をくすぐり・・・、そして酸味、甘み、塩味、旨みといった味覚が渾然一体となって口中に広がる。適度に歯ごたえのある皮と、溶けていく身と骨からは濃厚な旨みが止めどなく溢れ出します。その美味しさから、やみつきになってしまったという熱狂的なファンも多数!!


ふなずしは、寿司の原型と言われる「熟れずし(なれずし)」の一種。
熟れずしは、東南アジアに起源を発するといわれる保存食品で、魚を塩漬けし、ご飯で漬け込んで発酵させたもの。ふなずしの他にも秋田の「ハタハタずし」や三重の「さんまずし」などがあります。「寿司」と聞いてまず私たちが思い浮かべるものからは、少し遠いところにあるものなんです。

老舗鮒寿司店「阪本屋」のご主人に聞く

ふなずしの味を決める作業「飯漬け」(いいづけ)は夏の土用の時期に行われます。発酵の肝になるこの作業を知るために、暑いさなか、明治2年創業、大津市にある老舗鮒寿司店「阪本屋」ご主人の内田健一郎さんを尋ねました。

内田健一郎さん
阪本屋ご主人の内田健一郎さん

「なぜ暑いさなかに飯漬けを行うのでしょうか?」と素朴な疑問をお尋ねすると「漬け込むときの温度が肝心で、微生物の動きが違う」とのこと。発酵を進めるためには気温が高いことが必要で「仕上がりの味わいが違ってきますよ」と内田さん。 さらにふなずしは、漬ける作業をする人によっても味が違うと言われるほど。


ニゴロブナ
飯漬け中のニゴロブナ エラの中までご飯を詰めて漬ける
ニゴロブナ
店の奥では飯漬けを待つ塩漬けのニゴロブナが干されている

「うちでは、飯漬けをするのは自分だけ。店主が漬けると決まっていて、それまでは父が。曾祖父は漬ける作業を人に見せませんでした」と内田さん。ご飯の量や漬け方も味に影響するのだとか。まさに門外不出の技。

「毎年決めてやっていても、不思議とまったく同じ味にはならない」とは、発酵の神秘です。
ですが、この味わいの違いは、ふなずしの大きな魅力でもあります。
酸味や旨み、香り、様々な味わいを楽しめ、自分の好みの味にも出会える。それが、ふなずしを食べる醍醐味でもあります。

塩にご飯、そしてニゴロブナ、これらが揃わないとあの味わいに仕上がらないようです。

そう考えると、滋賀県の味として愛されるふなずしは、ニゴロブナを育む琵琶湖の環境、そして発酵に適した夏の気候など、滋賀の自然の恩恵を受けて出来上がる、繊細な一品であることに気づきます。

ふなずし
オレンジ色の部分は卵 ニゴロブナのメスを使ったふなずしが定番

仕込みから約1年かけてやっと食せるようになる、"スローフード"でもあるふなずし。
「発酵が進まないと味がわからないし、夏に仕込んだ結果が出るのは桶から出す冬。今年はこうしよう、次はこうしようと調整して味を見て、そうしているうちに一生終わりそうですよ」と笑う内田さん。
うーん、ますます奥が深い。

(取材日:平成24年8月3日)

滋賀県内の「ふなずし」のお店

ふなずしを取り扱っている「おいしがうれしがのお店」をご紹介します。なお、仕入れ等の状況により取り扱っていない場合があります。

  • JAおうみ冨士ファーマーズマーケットおうみんち〔販売店〕
    住所:守山市洲本町2785 電話:077-585-8318
  • おつけもの丸長 〔販売店〕
    住所:大津市尾花川13-14 電話:077-524-5055
  • ひさご寿し 〔飲食店〕
    住所:近江八幡市桜宮町213-3 電話:0748-33-1234
  • 琵琶近江どっとこむ 〔ネットショップ〕
  • 飯魚(いお) 〔販売店〕
    住所:近江八幡市安土町上豊浦973-1 電話:0748-46-6554
  • 漁師の店 川田商店 〔販売店〕
    住所:近江八幡市長命寺町48-20 電話:0748-32-3140
  • 道の駅 竜王かがみの里 〔販売店〕
    住所:蒲生郡竜王町大字鏡1231-2 電話:0748-58-8700
  • アグリパーク竜王 〔販売店〕
    住所:蒲生郡竜王町山之上6526 電話:0748-57-1311
  • 川魚のよしうめ〔販売店〕
    住所:高島市安曇川町末広1-14  電話:0740-32-2374

上記以外のお店もあります!「琵琶湖の湖魚・加工品販売所リスト」はコチラ
(滋賀県漁業協同組合連合会の南郷水産センターのホームページにリンクしています)

ふなずし漬け方講習会参加者インタビュー「初めてのふなずし」

ふなずし漬け方講習会
作業の説明を熱心に聞く参加者ら

県内各地では夏場に、滋賀県漁業協同組合連合会や漁業協同組合が主催するふなずし漬け方講習会が行われ、いずれも定員をオーバーする大人気!

一般的には、塩漬けをしたニゴロブナを受取り、伝統的な漬け方を教わりながら飯漬けを行います。参加料は有料となりますが、必要な道具類を準備してくださるところも多く、参加者は自ら漬け込んだ桶を大切に持ち帰り、自宅でふなずしが発酵し、熟成するまでを見守ります。


そんな講習会に来られた方に、ふなずしにハマッたきっかけをお伺いしようと、8月2日(木)朝日漁業協同組合が旧湖北町(長浜市)で開催した「鮒ずし講習会」におじゃましました。

平日の開催にも関わらず、1日20名の参加者枠に、2日間で60名超の申込があるほど。
抽選で選ばれたみなさんは、説明を受けながら、熱心に作業を進められています。

講習会の様子 講習会の様子 講習会の様子講習会の様子
(左)塩漬けされたフナのよごれなどをキレイに取り除く。
(中)水気が残らないように乾かす。
(右)ご飯に漬け込む。エラの中にもご飯を詰めて、フナが直接重ならないよう何層にも敷き込む。

作業の合間を縫って、お話を伺いました。

甲良町からご夫婦で参加された中村さん。

中村さんご夫妻

ご家族みなさんが大のふなずし好きなのだとか。嫁いで来て初めて食べたという息子さんのお嫁さん、「今はとりこになって、頭までお吸い物にして食べてるほどよ」。


講習会場の近所から来られた内貴さん。

内貴さん

「ふなずしは手間がかかるわなぁ」と言いながらも、自分で楽しむ分を漬けるため講習会へ参加。「お客さまが来られても、ふなずしを出すだけで大丈夫やわ」とのこと。ふなずしは、おもてなしの最上級のもの。


長浜市内から参加の番野さん。

番野さん

「小さい頃から、家で漬けてるのを見て覚えてるんよ。小学校から帰ってきたら、おやつ代わりで小さいめのふなずしをパクパク食べてたわ」。


同じく長浜市内からの脇坂さん。

脇坂さん

「最初は家内もいやがってたけどね、今は大好物になってるよ」


大津市からお越しの遠藤さんご夫婦。

遠藤さんご夫婦

「初めて食べたときにチーズみたい!ってびっくりしてね」というお二人は、チーズが大好物。ふなずしの美味しさにも、すぐとりこになられたようです。おいしい食べ方を伺うと、「フルーツに合わせたり、パスタと一緒でもいいかも・・・?」これは、ご自宅で新たなレシピが誕生しているかもしれません。


大津市から参加されていた東野さん。

東野さん

こちらの女性は中国から嫁いで来られたとのことでした。ふなずしの魅力は万国共通か!? 伺ってみました。「最初は匂いが苦手だったんですが、卵の部分は平気だったので食べてみて、それからは徐々に慣れてきましたよ」と漬け込み作業をしながら嬉しそうに一言。「健康にいいからと、夫の母から教わって、今では大好き!」


最後は長浜市内から参加の清水さん。

清水さん

ふなずし漬けは初体験だとか。「どうなるかなぁ」と言いながらも手際よい。趣味と実益を兼ねて、参加してみたとのこと。
ふなずしのおすすめの食べ方は?「最初は臭いと思うかもなぁ。でも、一杯飲んだあと、ふなずしに、醤油と鰹節とお湯をかけて食べたらたまらんで~!」


ふなずし愛好者たちの中でも、「最初は苦手だった」という声もちらほら。今ではみなさん、自ら漬け込む熱烈ファンです。
かくいう取材スタッフも、3回目にして好物となったその一人。少し苦手かな、という方、食わず嫌いの方、ぜひ何度かトライして、その味わいを知ってみてください。深い美味しさのとりこになること受けあいです。

ふなずしは、ご家庭で簡単に作れます。 滋賀県漁業協同組合連合会のサイトでは、ふなずし講習会の情報や、ふなずしの作り方を案内されています。

なかでも、作り方の動画は必見!

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