さぁ、「小鮎」最盛期の到来です!
トロ箱いっぱいの小鮎
初夏になると、琵琶湖の周辺では小鮎(コアユ)を炊くふくよかな香りがただよい出します。
くせがなく、旨みが強くて、少しほろにがい小鮎は、ある時はみんなのご飯の友、またある時は子どもたちにはおやつ感覚で、大人のみなさんには晩酌の肴で。お店に並び出すとついつい手が伸びてしまう、滋賀の夏の味覚。
「コアユ」と聞くと、"子"鮎・・・つまり鮎の稚魚のことを想像される方が多いかと思いますが、「"小"鮎」。琵琶湖育ちの鮎は、成魚でも10cmほどにしかならず、「小鮎」と呼ばれています。
一口サイズの小さな魚なのですが、日本最大の湖「琵琶湖」で、最大の漁獲量を誇る湖魚の代表選手。鮎は、近江牛や近江米などに並び、滋賀を代表する自慢の一品、県産食材のPRポスターの図案にも使われています。
左は県産食材のPRポスター「滋賀品質」のうち「湖魚」。
左から、田村 喜世治さん、岡本 和夫さん、舩野 良信さん
そんな「小鮎」を獲るために琵琶湖で受け継がれてきた漁法、「えり漁」を行う今津漁業協同組合の岡本さん、田村さん、舩野さんに、小鮎の魅力をおうかがいしました。
「小鮎は何してもうまいでぇ! 天ぷらやろ、南蛮漬けやろ、佃煮もええなぁ」と開口一番、自信に満ちあふれた言葉が。
「最近の人はあんまり鮎炊いたりせぇへんやろ。でも、アツアツの出来たて食べたら、もひとつ味が違うしなぁ」と岡本さんの顔がほころびます。
小鮎をめぐる漁法いろいろ
「ツボ」と呼ばれる部分。
外周は50m、深さ20mほどの網がかかっている。
小鮎は5月ごろからがよく獲れ始め、8月上旬ごろまでが盛期。今津漁業協同組合の場合、「えり」という漁法で小鮎を獲っています。
定置網の一種で、湖岸から沖合に向かってイカリの形に杭が配置されているのが「えり」。イカリの両端にあたる所は「ツボ」と呼ばれ、魚の習性を利用してツボに向かって魚を誘い込む仕組みになっています。
今津漁港から「えり」までは船で5分ほど。
「雨が降っても、波がおとなしければ毎日行くで」と、毎朝のえり漁を3人でこなす岡本さん、田村さん、舩野さん。
「どれだけ入ってるかな~と、「えり」を見に行くのが楽しみや」と田村さん。
「えりに近づくと、雨も降っていないのに、ツボの中の水面に雨だれのような波紋ができてるのが大漁のしるし。そういうときは100kg揚がっても何にもしんどいことあらへん」
大ベテランの田村さんと漁師歴5年の舩野さん。豊漁のウキウキした気持ちを思い浮かべ、頬がゆるみます。
「獲れへんかったら、がっくり、どっと疲れるけどなぁ」
生きもの相手、そんなときもあります。
コアユは季節を通して、長い年月にわたって人々に親しまれてきた
琵琶湖では、小鮎の生態に合わせて多くの漁法が編み出されてきました。
春は、湖岸の群れをカラスの羽をつけた棒で追い込む「追いさで網」。
夏は湖面近くの群れを漁船で豪快にすくい取る「沖すくい網」。
他にも早春から始まる「小糸網」と呼ばれる刺網。川では「やな漁」。
かつては「地びき網」も盛んでした。
季節を通して小鮎とともに、漁法も変わる、滋賀の風物詩。
独特の発達をしてきた琵琶湖の漁法。「えり」もその一つ。
「えりの場所は昔からあの場所ですか?」と最後に尋ねると、「昔っからの場所や」との岡本さんの答え。
いにしえの人々が考え出し、脈々と受け継がれてきた伝統の漁法なのだと、しみじみ。
味わいレポート"小鮎を炊いてみよう!"
魚清商店の藤戸 清昭さん(右)と操さん。
今津の港から歩いてすぐ、湖魚の佃煮などを販売する「魚清(うおせ)商店」さんに、ご家庭での「小鮎」の炊き方を伝授していただきました。
「店の佃煮は日持ちも考えて硬めに炊きあげるけど、自宅で炊くと家の味付けもできるし、柔らかさも好みでできますで」とご主人の藤戸清昭さん。
鮮魚も扱う魚清商店、「京都の方が毎年来られて、生の小鮎を買われますよ」と、奥様の操さん。「うちで炊くんや、ってね」。
小鮎の佃煮
わが家でつくる小鮎の佃煮!・・・それでも、魚を炊くのは少し難しそうという方に、佃煮のプロ、藤戸さんからのアドバイスです。
●醤油を強火で沸騰させ、小鮎をざぁっと入れる
※水は生臭みが出るので入れない
※沸騰してできた醤油の泡を小鮎にかぶせることが大事
●砂糖や酒などは小鮎と一緒に入れる
●もう一度煮汁が沸騰して噴いてきたら中火にし、トロトロ煮る
※身が崩れやすいので、触らない
※泡(アク)が出てきたらとる
●煮汁が少なくなってきたら弱火にする。柔らかさをみて、好みになったら完成。
※味が薄いと感じたら、少し煮汁に漬けたままにしておく
※トータル50分ほどが目安。
包丁を使わないため、魚をさばくことができない方でも、火加減と鍋の様子に気をつければ、滋賀の郷土料理「小鮎の佃煮」が完成です。
藤戸さんご夫妻に小鮎の味覚をさらにおうかがいすると・・・。
佃煮も良いけど、と前置きして「天ぷらもおいしいで。揚げたてを食べてみ、ビールに合うで」と藤戸さん。「揚げるそばから孫が食べて行ってねぇ」と操さん。
ビールに合う?!
その後、取材陣は別のところに移動して、炊きたての小鮎と、揚げたての天ぷらをいただいたのですが、佃煮も天ぷらもそれぞれに小鮎の旨みを濃く感じ、炊きたては甘く、揚げたては香ばしい! 熱々の旨さに滋賀に生まれた幸せをつくづく感じた次第。
小鮎のおいしがうれしがのお店
琵琶湖特産の小鮎やその加工品を取り扱っている販売店・飲食店をご紹介します。なお、仕入れ等の状況により取り扱っていない場合があります。
- 唐橋河畔うおい〔販売店〕
住所:大津市唐橋町16-4 電話:077-537-0181
お店から一言:「新小あゆ やわらか煮」は、漁師さん直接仕入れで、今の季節しか味わえない商品です。 - 漁師の店 川田商店〔販売店〕
住所:近江八幡市長命寺町48-20 電話:0748-32-3140
お店から一言:自ら魚をとり、その日に加工して商品にしています。取扱商品として小あゆ佃煮・あゆ南蛮漬け等があります。また県内外、道の駅等でも販売しております。 - ひさご寿し〔飲食店〕
住所:近江八幡市桜宮町213-3 電話:0748-33-1234
お店から一言:小鮎の天ぷら(小鮎料理の王道。揚げたてを山椒塩でお召し上がりください。)小鮎の南蛮漬け(さっぱりとしてしっとり軟らかい。地酒とぴったり。) - 琵琶湖近江商店〔通販〕
お店から一言:「小鮎の浜だき」は、甘露煮に比べ小鮎本来の味が楽しめる佃煮です。とっても柔らかいので、お年寄りや小さなお子さまにも丸ごと食べて頂けます。お酒の肴や白ご飯、お茶漬けにもぴったりです。
取材地(高島市今津)周辺の観光情報
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今津港(観光船のりば)
毎年3月中旬から11月末日までの8ヵ月半の間、竹生島との間に定期観光船が運行されます。
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琵琶湖周航の歌資料館
「われは湖の子・・・」で知られる琵琶湖周航の歌。作詞者・小口太郎をはじめ、歌にまつわる資料が展示され、館内では多くの演奏家による曲が聞けます。
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今津ヴォーリズ資料館
ヴォーリズ建築のことなら何でも分かるよう資料が展示され、大人から子供まで学習することができます。
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滋賀県立びわ湖こどもの国
琵琶湖畔にある広い園内には芝生広場や全長40㍍もある大型遊具・子どもたちの創造力をかきたてるアスレチック遊具・冒険水路・キャンプ場・虹の家などがあります。
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新旭水鳥観察センター
センターの大きな窓からは穏やかな琵琶湖の入江が一望でき、望遠鏡で見ると、北方から渡ってきた水鳥たちの細やかな仕草がよく分かります。