杉谷とうがらし
甘とうがらしの仲間
杉谷とうがらしはナス目ナス科トウガラシ属に属する甘とうがらし、いわゆる「青唐」の一種です。ビタミンCやカロテンが豊富で、カリウムやビタミンB6も比較的多め。抗酸化作用のあるβカロテンも多く、油で炒めると効率よく摂取できます。
とうがらしの原産地は中南米ですが、15世紀にコロンブスによってスペインにもたらされ、ここで辛味の少ない品種が誕生。日本へは辛とうがらしが16世紀に伝来しましたが、甘味種が欧米から入ったのは明治時代。一般に広まったのは第二次世界大戦後といわれています。
曲がっていても味は素直
「青唐」の別名「シシトウ(獅子唐)」は、でこぼことした形が獅子の顔をイメージさせることからついたとか。
京野菜の「伏見甘とうがらし(ふしみあま)」や「万願寺とうがらし」「山科とうがらし」のほか、大和伝統野菜の「ひもとうがらし」なども、甘とうがらしの仲間ですが、杉谷とうがらしの特色は、なんといってもくの字型に曲がったユニークな形。皮が薄く、苦みの少ない素直な味のため、生でも食べられるのが大きな魅力です。
つや良し色良しが味も良し
濃すぎず薄すぎない、さわやかな緑がおいしい色。色のむらがなく、しわもない、ピンと張ったものを選びましょう。軸(果梗)がついたままの方が、鮮度が保てます。
苦みが少なく、ほんのり甘みがあるため、生でかじっても、サラダにしてもいいですが、さっと油で丸ごと炒めたり、直火で焼いても美味です。
杉谷なすび
日本での歴史は1200年以上
なすは、インドが原産とされるナス科の一年草で、日本に入ってきたのは1200年以上前の奈良時代。世界中に多種多様の品種があり、「なす紺」のもとになった紫色だけでなく、英語名の「eggplant」のもとになった白のほか、緑色、緑と白のまだらなど、色も形も様々です。
約93%が水分ながら、食物繊維やカルシウムやマグネシウムといったミネラルをバランスよく含み、色素のナスニンはアントシアニンの一種で、抗酸化作用があることで知られています。
(参考:日本食品標準成分表)
ご当地なす形はさまざま
日本各地では、宮城の仙台長、京都の賀茂なす、泉州の水なすなど、伝統野菜として様々な品種が作られています。杉谷なすびは、丸なすの仲間ですが、直径約10センチのしもぶくれの球形、重さ300~350グラムのジャンボサイズで、ずっしりとした重みがあります。ナス紺というよりは黒に近い濃い色が特徴です。地元では「杉谷なす」ではなく「杉谷なすび」と呼ばれます。
日本で一般的ななすといえば、中長なすの「センリョウナス」ですが、各地で様々な〝ご当地なす〟が作られているのは前述の通り。滋賀県甲賀地方では、長年「なす」といえば杉谷なすびを指していたそうです。
東北では細長い長なす、九州は大なす、信越、関西は丸なす、関東一円は卵形なすなど、地方によって形に特徴があるのもおもしろいところです。
(参考:独立行政法人農畜産業振興機構
「野菜図鑑」http://vegetable.alic.go.jp/panfu/nas/nas.htm)
形のよいものは味も良し
おいしい杉谷なすびは光沢があって、しもぶくれの美しい巾着型。皮が薄く、実が軟らかいので、刻んで塩もみした浅漬け、分厚く切って焼いたステーキ、油で揚げてだしでさっと煮た揚げ浸しなど、なすを主役にした料理で、軟らかさと味の良さを味わってください。
(生産者:平井治良さん)
料理のポイント
杉谷なすび
実が軟らかいので、分厚く切るとおいしいです。火を通しても鮮やかな色が変わらないのも魅力です。油との相性がとてもいいですが、油を吸うので、油の量は控えめにしましょう。種が多いので、ゆでると種のところだけ色が変わり、種の食感も気になるので、ゆでる料理には向かないかもしれません。
杉谷とうがらし
皮が薄く、軟らかくて味がいいので、さっと焼くだけといったシンプルな料理が合います。
色落ちしにくいですが、火を通し過ぎないのもポイントです。
清水クッキングスクール(滋賀県守山市)清水厚子先生