トップページ > 産地レポート > ナス 「東川町蔬菜生産組合」松本稔さん

ナス~訪ねた人 「東川町蔬菜生産組合」松本稔さん~

漬物にしても色落ちしにくい不思議なナス

ナス「東川町蔬菜生産組合」松本稔さん

鮮やかな漬物のカギは"金気水"(かなけみず)

焼いてよし、煮てよし、揚げてよし、漬物にしてもよし。これほど多彩な調理法でいただける野菜も珍しい。そんな万能選手のナスですが、漬物に適したナスがあることをご存じでしょうか。近江八幡市東川町、平坦な農地が広がるこの町で作られているナスがそれです。「この辺りは金気水でね。漬物にすると発色良くきれいに漬かるんです」。そう教えてくれたのは、東川町蔬菜生産組合で代表を務める松本稔さん。この地でナスづくりに長年携わってきたベテラン農家です。

「水郷の町」と呼ばれ、昔から水に恵まれる近江八幡市ですが、東川町の水は他とは違う特徴があります。それは、土壌の地下水が鉄分を多く含む金気水であること。ナスで漬物をつくるとき、糠漬けでは糠に釘を入れて、水漬けではミョウバンなどを入れて色落ちを防ぐことがありますが、東川町のナスはその必要がありません。何かを添加しなくても色鮮やかに漬かることが評価され、東川町でつくられるナスのほとんどは有名な漬物屋に買い取られて漬物になるといいます。「なぜ東川町だけ金気水なのかは分かりません。道を一本挟んだ向こうは普通の水です」。まるで漬物用のナスをつくるためともいえる少し不思議なスポット。この地で、松本さんは全長103mのビニールハウスを2棟立て、毎年漬物用のナスを育てています。

金気水を吸ってすくすくと育つ東川町のナス金気水を吸ってすくすくと育つ東川町のナス

濃黒紫色で艶の良いナス濃黒紫色で艶の良いナス。肉質は緻密で柔らかい

ナスの花「親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない」ということわざがあるように、ナスの花は咲くと必ず実をつける

組合としてナスをつくり続けた歴史

東川町では長卵形のナス「千両」を生産しています。毎年2月に育苗を20日ほど行い、3月に圃場へ植え替え、1カ月後の4月から7月までが収穫期間となります。収穫したナスは組合の事務所で、大きさと見栄え(形・傷の有無など)で選別されて箱詰めされます。選別するのは組合の「ナス部会」の日々の仕事です。昨年はナス部会所属の4軒で出荷量38トン以上を記録しました。選別作業は手作業ですが一瞬で、用意されたコンテナにどんどん振り分けられていきます。「毎日やっていたら一瞬で分けられますよ」と話す組合の皆さん。そのスピードには確かな腕と経験値が見えます。

収穫したナスを選別する松本さん収穫したナスを選別する松本さん

この町のナスづくりは約50年前、米の減反政策として始まりました。当初は露地栽培でしたが、県の普及指導員の勧めで、3年でハウス栽培に切り替えました。「ハウスにしたのは露地栽培では天候によって他地域と収穫が同じ時期になってしまうこと、風が強いため葉が揺れて柔らかいナスの実を傷つけてしまうこと。この2つが主な理由ですね」

ハウス栽培になってから風の影響を受けにくくなったためナスの傷も減り、最高品質を表す"秀"の割合がかなり上がったそうです。先代から合わせて約50年間、組合が歩んだナスづくりを見てきた松本さん。「これからも現状を維持しながら、元気に農業を続けていけたらと思います」と、笑顔で語ってくださいました。

近江八幡の豊富な水環境のもとでブランドを推進

琵琶湖に面した近江八幡市は、美しい自然を守るため環境に配慮した農産物であることを示す「水郷ブランド」を掲げており、農薬・肥料の使用基準や、圃場管理や水質管理のガイドラインが設けられています。東川町でもこれに則り、安心・安全でおいしい野菜づくりを進めています。無添加なのに色鮮やかで、おいしいナスの漬物に出会ったら、それはもしかしたら、松本さんが育てたナスなのかも知れません。

組合でつくったナスの糠漬け組合でつくったナスの糠漬け。漬け上がりが自然な紫色になるのが魅力

(取材日:2020年6月2日)

Page Top