トップページ > 産地レポート > 中輪菊 東近江市 田井中与弘さん

中輪菊~訪ねた人 東近江市 田井中与弘さん~

"かっこいい菊づくり"にこだわる

「山﨑農園」山﨑容子さん

滋賀の菊生産と地域の農業をリード

東近江市福堂町で年間通して中輪菊をつくる田井中与弘さん。滋賀県内では数少ない菊専業農家の1人です。県の菊部会の会長も務めながら、各地で菊専業を目指す若手農業者のサポートをしています。同時に、140ヘクタールの農地がある同町で、50ヘクタールを所管する農事組合法人の運営にも携わり、理事として機械仕事や人材手配の業務を担当しています。

個人では、約90アールのほ場にハウス18棟を所有し、苗づくりから挿し芽での定植、収穫までを手作業で行います。一般的に菊は、苗を育ててから茎を切って土に刺すことで増やしていきます。苗を購入することもできますが、田井中さんは自らハウスで苗からつくっています。

「自分で作るのも安全保障なんです。もし検疫で引っかかって購入できなくなっても困らないようにしていますし、苗が足りなかった人も取りに来られるようにしています。助け合いですね」。

挿し芽をして2週間の苗挿し芽をして2週間の苗。地温維持のためにシートを被せています

花は植物。植物は土づくりから

菊は品種により開花時期が異なるため、田井中さんはそれぞれのハウスで生産のサイクルをずらしながら、一年を通して菊を生産しており、その本数は年間で70万本にもおよぶそう。特に出荷量の多い正月と彼岸とお盆の時期は出荷の10日前から収穫を始めないと追いつかないほどです。これだけの菊を育てながら法人としての営農にも力を入れる田井中さんは、可能な限り菊生産の自動化、省力化を目指しました。

「どうしても挿し芽や収穫は手作業になる。それ以外のところを効率化しようと温度管理と換気は自動でするようにお金をかけた」とのこと。所有するハウスでは換気扇が常に稼働し、寒い時期の暖房も自動で稼働。カーテンも時刻と温度に合わせて自動で開閉するというから驚きです。

もちろん、土づくりにも抜かりありません。

「ポイントは、そのままでも育つ土づくりです。花は植物。土ができていないと植物は思ったようには育ちません」。同じハウスで1年間に2回生産するため、収穫を終えたらそのたびに土壌を消毒してリセット。有機物や土づくり資材を入れてから挿し芽を育てます。元は粘土質で水はけのよくない土壌でしたが、先代の父親が始めてから足掛け58年、この地に根付く土づくりで"そのままでも花が育つ"土壌へと変えていったのです。

蕾の状態の中輪菊蕾の状態の中輪菊。消費者に届くまでのタイムラグを考え計算して収穫作業を進めます

ハウス内の気温を調整ハウスには何重にも張ったカーテンがあり、自動開閉でハウス内の気温を調整します

菊の価値は葉に表れる

田井中さんのこだわりは"かっこいい菊をつくる"こと。栽培途中にもホルモン剤や葉面散布剤を使いながら、見た目のいい菊づくりにこだわります。「花よりも葉のツヤです。葉も込みで中輪菊ですし市場でも葉を見られます。葉がバランスよく立っていると花の見た目も良くて、かっこいい理想の中輪菊ですね」と教えてくれました。

県の菊生産をリードする田井中さんのところには、種苗会社から新品種の実験栽培の依頼や、全国一の菊生産量を誇る愛知県から視察が来ることも。「県南部に比べて日照量が少ないし冬場の気温は厳しいです。愛知の方が見に来たときに『こんな寒いところでつくっているなんて大したもんだ』と言われました」とのこと。

種苗会社からの勧めもあり、県内でいち早く新しい品種の試験栽培にも取り組んでいます。「新しいものが来るのは嬉しくて、どんな花が咲くかいつも楽しみなんです」と田井中さん。これからも滋賀の菊生産の中心となって活躍することでしょう。

「田井中さんの菊は長持ちする」と評判ハウスで温度管理されたストレスの少ない栽培のおかげで、「田井中さんの菊は長持ちする」と評判です

電照がつけられたハウス内電照がつけられたハウス内。光量は多くを必要とせず、新聞が読めるほどの明るさで開花時期をコントロールできるそうです

田井中さんの育てた中輪菊田井中さんの育てた中輪菊。整った立ち姿です

(取材日:2020年12月9日)

Page Top