産地レポート

豚

産地レポート

~訪ねた人:養豚推進協議会会長 今井さん~

安全で美味しい豚肉を
多くの滋賀県内の皆さんに食べて欲しい!!

好奇心たっぷりの子豚たちを手にする今井さんご兄弟

滋賀の養豚農家

県内に5軒となった養豚農家さんの中から、近江八幡市にある今井養豚場へ今井順さん(養豚推進協議会 会長)を訪ねました。
養豚場の入り口には車両や人を消毒するための噴霧器があり、取材スタッフは白い不織布の防護服へと着替え、靴も上からカバーをかけて、いざ豚舎へ!
ここまで厳重にするには訳があります。「豚はデリケート。病気に弱くて、病気との闘いやな」と今井さん。外部から入ってくる病原菌を寄せ付けないよう、管理が行き届いているのです。

今井さんは弟さんと共にこの養豚場を営まれています。養豚に携わって何年かと伺うと「父親を手伝って、エサやりとかね、いろいろな作業をやってきましたわ」と今井さん。12歳の頃から養豚に関わり始め、そのキャリアは52年だそうです。


繁殖から肥育、一貫した養豚

今井養豚場にいる豚は全部で1800~2000頭。生育状況によって豚舎が分けられています。


子豚 成長過程の豚(左)生後1カ月半ほどの子豚たち。片時もじっとしていない。
(右)まだまだ成長過程の豚たち。

「50年豚を見てるとね、自然と様子がわかってきますよ。動物は何でも目で訴えるでしょ、犬とかもね。豚も一緒でね、目を見ていると何をしてほしいのかだいたいわかる。熱がある豚は目が充血しているしね」生きもの相手の仕事です。365日、飼育の作業は休むことはありません。
「子豚もね好奇心の塊ですからね、最初はビックリして逃げますけれど、ずっといると寄ってきたりしますよ」と大事そうに子豚たちを見られます。

今井養豚場は繁殖と肥育を一貫して営んでおられます。「妊娠期間は約114日、1回の妊娠で10頭前後の子豚を生みます」別の豚舎には、親豚が約250頭飼育されている。


オス豚繁殖用のオス豚 品種はディロック
体重200kg!のど迫力

今は豚の数がちょっと少ない、と今井さん「夏が暑かったでしょ。そのときの繁殖がうまくいっていない。豚も人間と一緒。夏バテしたら、発情がうまくいかなかったり、子どもの数が少なくなったりして、ちょうど出産時期にあたる1月頃からの頭数が少なくなる。気候の変化がボディブローのようにじわじわと効いてくるわ」。

「いつも檻の中にいてるでしょう、いわば閉じこめて"追い詰めてる"ことにもなるね」と今井さん。子豚が離乳したあとの親豚を敷地の泥田に放牧して飼育されるそう。「豚は本来は放牧で、微生物を食べるのに土を噛んでる生活だったんですよ。だから土の上で過ごさせると豚として本来持っている機能が戻ってくるんです」。5日間ほど外に出すことで、発情ホルモンの分泌を促せ、次の交配への準備を行うのだとか。「飼育方法の主流もどんどん変わってきているけど、本来の豚そのものの生活を残しておかないとね」。


「おいしいね!」感想を聞けることが日々の糧

出荷頭数は年間4000頭~4800頭。
180日間の飼育で約115kgまで育てて出荷されています。


豚舎の豚 出荷前の豚(左)豚舎を奥に進むと、飼育されている豚の体格も大きくなってきた。
(右)背中にラインが見える豚は近々出荷される。

「うちの豚は滋賀と三重県松坂市の2か所のと畜場へ出荷しています。これまでどこの誰が食べてくれているのかわからないこともあったけれど、今は『全農しが』で買い取ってもらい、コープしがを始め滋賀県内に流通している。県内の人が食べてくれている、とわかることは嬉しい。生産者としても責任感をさらに感じますよ」
反応がわかることで日々の養豚にも大きな励みになるのだと言います。

「安心安全でおいしい豚を作るのは当たり前になっている。その中で、『今井養豚場の豚はいつ食べてもおいしいな!』という言葉を聞くと生産者冥利に尽きる。毎日の糧やね」

品質向上と、飼料の効率化のため、10年ほど前から和菓子工場の規格外品などを飼料に混ぜて与えておられ、糖分やカロリーを補うのだそう。「人間が食べているものはやっぱりいいものなんやね。豚も和菓子を混ぜると食い込みがよい。1日に1kg~1.5kgの和菓子をやったら、飼料が1/4~1/3ほどで済む。それに、お菓子のカロリーがあるので、脂肪分がよくついたおいしい豚になる」これまで焼却処分されていた食品が飼料として活用される、いわゆる「エコフィード」。養豚農家にも、菓子を製造する業者にも、そして美味しい肉になり私たち消費者にも、廃棄物が減り環境にもよい四方よしですね。

「飼料を工夫してきて、肉質の検査をしてもらったら、特上ランクの評価をもらった。『めったに出ないんですよ』とほめてもらい、やっぱり飼育者としては嬉しい」近隣のスーパーや、食肉販売店、コープしがなど身近で購入してもらい「自分の近くの人に食べもらって、感じられた味わいを教えてもらえるのが一番!」購入者からの声が日ごろの研さんの支えになり、励みにつながっているそうです。まさに「おいしが うれしが」ですね。

(取材日:2013年3月4日)