産地レポート

トップページ産地レポート近江八幡市 ホンモロコ 沖島漁師の会

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近江八幡市 ホンモロコ 沖島漁師の会

琵琶湖が育む澄んだ味わい「ホンモロコ」

近江八幡市「沖島漁師の会」北村重俊さん

守りながら獲るということ

近江八幡市の北端、堀切港から船に揺られること約10分。沖島の港には、漁を終えたたくさんの漁船が停泊しています。その一角で漁具の手入れをしているのは「沖島漁師の会」の一員で、漁師歴およそ60年のベテラン北村重俊さん。ワカサギやハス、イサザなど、さまざまな魚を獲っている北村さんですが、今回はホンモロコについて詳しくお話を伺いました。

ホンモロコを獲る漁船 ホンモロコを獲る漁船は30隻余り。早朝に漁に出て水揚げし、昼前には港に戻ってきます。

ホンモロコは、体長10センチほどの小さな魚。琵琶湖固有種であり、ビワマスやニゴロブナなどと共に「琵琶湖八珍」にも数えられます。全国各地の田んぼや沼にも「モロコ」と呼ばれる魚はいますが、天然のホンモロコが生息するのは琵琶湖だけ。最盛期には年間350トンもの漁獲量を誇りましたが、環境の変化などにより5トンにまで落ち込んだ時期もありました。

旬は11月から春先にかけて。冬の間は琵琶湖の沖合の深い場所に生息し、産卵期が近づくにつれて浅瀬へと移動していきます。産卵期の5〜6月は禁漁とされ、資源を守りながら漁が続けられてきました。こうした禁漁期間の設定や稚魚の放流の取り組み、外来魚への対策などによって、漁獲量は少しずつ回復してきています。

魚の動きを読む、沖びき網漁

北村さんがホンモロコを獲るのは「沖びき網(ちゅうびきあみ)漁」と呼ばれる漁法です。水深50〜90メートルほどの沖合で行う、底びき網漁の一種。船から湖底に「追い綱」と呼ばれる太く重い綱を沈め、それを曳くことで湖底の泥を舞い上がらせます。濁りを怖がって魚たちが逃げ出したところを獲るため、ホンモロコ以外にも、ハスやフナ、スジエビなど、さまざまな湖魚が一緒に網に入ります。北村さんは15歳の頃から先輩たちに教わり、実践の中で漁の仕方を覚えていったといいます。

「この時期やったらこの辺りにおるやろ、というのは経験と勘が頼り。外れることもある。何年やっても"一人前"はないね」

船の上から深い琵琶湖の中は見えないため、時には湖底の岩や木に引っかかって網が破れてしまうことも。ベテランの北村さんでも「一日、無事に漁ができるだけでありがたい」と言うほど、毎日が試行錯誤の連続なのです。

それでも、狙いが当たった時の確かな手応えがある日は、苦労が一気に報われます。網いっぱいにホンモロコが入ると、中で魚が跳ね「ジャーッ」という独特の音がするのだとか。「魚が喋っとるみたいで面白いんですよ」。ホンモロコならではのその音が、獲れた喜びを実感させてくれるのだと、北村さんは微笑みます。

漁労中の北村重俊さん 沖島に住んでいる人の多くは漁師。北村さんも、漁具の修理や魚の選別などを島の先輩から教わったと言います。

湖魚の楽しみ方、いろいろ

冬の寒い時期、沖合の深い場所で獲れたホンモロコは臭みが一切なく、澄んだ味わいが特長です。北村さんの家では、焼いてから酢に漬ける南蛮漬けが定番。まろやかな甘みのある酢が、香ばしいホンモロコを引き立てます。食べた後も口の中に旨みが残って、もっと食べたくなってしまいます。

北村さんが獲ったホンモロコは、米原市にある鮮魚卸問屋へ出荷されるほか、近江八幡市のJAグリーン近江「きてか~な」などで販売されています。また、毎月第3日曜日に開かれる「浜大津こだわり朝市」に「沖島漁師の会」として出店中(ただし、出店は2026年6月までで終了予定)。ホンモロコ以外にもさまざまな加工品が並び、ワカサギの天ぷらなどはその場で出来立てを味わうことも!漁師の皆さんと直接会話しながら買い物ができるのも、朝市ならではの楽しみです。

「たくさん獲れたら、また明日も行こうと思えるし、買いに来てくれた人と『こうやって食べたらおいしいで』と話をするのも楽しい」と北村さん。漁獲量が減ってから縮小してしまった販路を広げるため、現在は改めておいしさを伝えているところだと言います。朝市や店先でホンモロコを手に取り、味わいを知った人たちが少しずつファンになっていく。その輪を広げるべく、北村さんは今日も漁に出ます。

ホンモロコの南蛮漬け 北村さんの家でも定番の南蛮漬け。酢に漬けても全く崩れず、ふっくらした身に旨みがギュッと詰まっています。

「浜大津こだわり朝市」の様子 京阪電車びわ湖浜大津駅前スカイクロスにて、毎月第3日曜日の8時〜12時に開かれている「浜大津こだわり朝市」。こだわりの湖魚を求めて、「沖島漁師の会」の皆さんの元へもひっきりなしにお客さんがやって来ます(ただし、出店は2026年6月までで終了予定)。

ホンモロコの佃煮 佃煮も、南蛮漬けと並ぶホンモロコ料理の定番。甘みと旨み、わずかな苦みが調和した味わいがクセになります。

(取材日:2026年1月15日)