産地レポート

トップページ産地レポート東近江市 明日葉 永源寺マルベリー 上田長司さん

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東近江市 明日葉 永源寺マルベリー 上田長司さん

不老長寿の妙薬「明日葉」をご存じですか?

東近江市「永源寺マルベリー」上田長司さん

近畿最大級の薬草農園に

〝今日摘んでも明日には芽が出る〟といわれるほど生命力が強いことからその名が付いたセリ科の多年草、明日葉。日本原産で、本来は温暖な地域に自生します。この植物を永源寺地域で栽培しているのが、永源寺マルベリーです。「耕作放棄地を桑畑で復活するプロジェクト」から有機農業に取り組み、2004年に創業した同社では現在、桑や明日葉、モリンガなど、およそ10種類を栽培。圃場面積は約10haで、薬用植物を栽培する農園として近畿最大規模を誇ります。中でも、明日葉の面積は2haほど。今では安定供給に成功していますが、そこに至るまでには、数々の研究と試行錯誤がありました。

有機農法での明日葉の暑さ対策に、ソルゴーを栽培 高温が苦手な明日葉のため、今年からはソルゴーを日除けとして栽培。有機農法を守る同社ならではのユニークな暑さ対策です。

試行錯誤の末に生まれた、永源寺の明日葉

明日葉の栽培を始めたのは2014年のこと。その効能に心を引かれ、さまざまな種や苗を取り寄せて試したといいます。

「元が暖かい地域の植物ということもあってか、はじめは失敗続きでした」と教えてくれたのは、生産管理部長の上田長司さん。研究を始めて4年ほどは、収穫量0という状況が続いたそうです。そんな中でもうまくいった部分を分析し、明日葉の栽培が盛んな八丈島へ勉強にも行ってノウハウを学んできました。 「明日葉は育苗期間が長く、定植してから収穫できるまでに2年かかります。病気や食害のリスクも高く管理が大変な一方で、根付けば多少の気候変化では枯れない強さもあります」

収穫した明日葉は、その日のうちにパウダーや、お茶・青汁などの原料として乾燥加工。生鮮食品としては出荷せず、軸まで全て使い切るため、1株1株を大きく育てています。しかし、同社の明日葉がこれほど立派に成長できる理由はそれだけではありません。たとえば土には、栗東トレーニングセンターから貰った馬糞や、近江牛の牛糞などを、木材チップと合わせて発酵堆肥にして使用。水は近くの堂の谷から引き、自然の高低差を利用して圃場の隅々まで行き渡らせているといいます。「この地域ならではの強みを存分に活かしているんです」と上田さんは胸を張ります。

大きく育った明日葉に胸を張る上田さん 栽培・収穫では、地域の高齢者や障がい者の皆さんも活躍。中には90代の方も!〝不老長寿の妙薬〟といわれる明日葉のおかげ、かもしれません。

明日葉の断面から黄色い液体(カルコン)が染み出ている様子 茎を切ると、すぐに断面から黄色い液体(カルコン)が染み出てきます。明日葉の象徴ともいえる栄養素の一つですが、衣服に付くと取れないため収穫の際は要注意です。

明日葉でおいしく、健やかに

明日葉の魅力は、その栄養価の高さにもあります。ポリフェノールや食物繊維、カリウム、βカロテンなど、体にうれしい成分がたっぷり。健康志向の高まりとともに、注目が集まっています。永源寺マルベリーでは、こうした栄養をぎゅっと閉じ込めた「明日葉パウダー」や「明日葉茶」を販売。パンやケーキなどの生地に練り込んだり、揚げ物の調味料に混ぜたりと、料理の色付け・香り付けにも便利です。商品はオンラインショップで購入できます。

「桑や明日葉の収穫体験も定期でしているので、ぜひ多くの人に来ていただきたいですね。まだまだ明日葉の知名度は低いですが、今後どんどん広まって、日本が誇る植物になってくれればうれしいです」

オンラインショップで販売している明日葉パウダー オンラインショップでは、明日葉パウダーや明日葉茶、桑と明日葉をブレンドしたほうじ茶などを販売しています。

(取材日:2025年7月8日)