産地レポート

トップページ産地レポート伊吹在来そば 訪ねた人 米原市 農事組合法人 ブレスファーム伊吹

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伊吹在来そば~訪ねた人 米原市 農事組合法人 ブレスファーム伊吹~

古くからのそば栽培地、伊吹

そば栽培の様子

守られた伝統。伊吹在来そばの歴史

9月下旬から10月にかけて、米原市の伊吹山麓を車で走っていると、あちらこちらで可憐な鈴なりの白い花畑に出合います。咲いているのはそばの花。10月下旬には花が散って実がなり、収穫の時期を迎えます。

「伊吹在来そば」の由来でもある伊吹山は、古くから信仰の対象であり、修行の場として多くの僧が訪れました。平安時代後期から鎌倉時代にかけて、その修行僧たちが食料確保のために山腹で栽培しはじめたのが、伊吹在来そばの起源であるといわれています。その味は数百年前から評価されていて、かつてはこの地を代表する名産として、諸侯藩士にふるまわれたり、藩に献上されたりしていました。

江戸時代以降もそばの栽培は続けられましたが、1964年に伊吹山の一部がセメント鉱山として開発されたことに伴って地域の人が麓の集落に移住し、農家が激減。それでも栽培が途切れることは辛うじて免れ、山麓の一地域で細々と守られてきました。転機が訪れたのは1995年のことです。滋賀県湖北地域農業改良普及センターと、伊吹在来そばの復活を目指す農家が協力して在来種の種子を導入し、試験栽培を開始。生産規模を少しずつ拡大してきました。

蕎麦の花施肥、防除不要で手間がかからず、雨がほとんど降らなくてもよく育つそうです。

伊吹在来そばを食べれば、そばの概念が変わる!?

伊吹山周辺は、冷涼な気候と昼夜の寒暖差が特徴で、そばの栽培に最適な環境です。また、山に囲まれた地形は、交雑を起こしやすいそばの品種を守り、在来種本来の味わいを今日まで伝えてきました。この地で育つそばの実は一般的なものと比べて粒が小さく、そのため、粉や麺にしたときに皮の部分が多く入り、そば本来の甘みや香りが強く感じられます。

蕎麦の実伊吹在来そばは、直径4.5mm以下の小粒な実が特徴です。

2020年4月にオープンした「蕎麦の里 伊吹」では、玄そば(殻つきの実)をそのまま挽いた"黒い"そばと、殻を取った抜き実を挽いた"白い"そばを日替わりで提供しています。「特に石臼で挽いた瞬間は、驚くほど良い香りがします。ナッツの香り、草原の香り...。感じ方は人それぞれですが、そば本来の味をお楽しみいただけると思います。」と店長の伊富貴良市さん。まずは、そばの甘みや香りを楽しむため、塩のみで味わってみるのがおすすめです。

左から渡部千洋さん、伊富貴良市さん、生産者の伊富貴務さん左から渡部千洋さん、伊富貴良市さん、生産者の伊富貴務さん。

伊吹在来そばをもっと多くの人へ

同店で食べた伊吹在来そばに魅せられ、現在そば打ちに励んでいるのは、修業を始めて8カ月目だという渡部千洋さんです。

「皮が多い分、一般的なそばに比べて打ちにくく、毎日が勉強の連続ですが、『おいしかった』『定期的に来たい』といったお客さまの声を励みに頑張っています。遠方から来てくださる方もいらっしゃいますが、まだまだ認知度は高くないので、より多くの人においしさを知ってもらうお手伝いができればと思っています。」

2019年9月には、伊吹在来そば(伊吹そば)が農林水産省の地理的表示(GI)に登録されました。「伊吹在来そば」の名が、再び全国ブランドとして知られる日はもうすぐなのかもしれません。

伊吹在来そば公式ブランドサイトhttps://ibuki-soba.jp/

伊吹在来そばお客さんの中には塩のみで食べる人もいるほど、豊かな風味と野趣に富んだ味わいの伊吹在来そば。ピリッと辛い伊吹大根と一緒に味わう「伊吹おろし」もおすすめです。

(取材日:2023年9月22日)