産地レポート

トップページ産地レポート守山市 守山矢島かぶら 守山矢島かぶらの会

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守山市 守山矢島かぶら 守山矢島かぶらの会

近江の伝統野菜・守山矢島かぶらを市の名産品に

守山矢島かぶらと守山矢島かぶらの会のみなさん

町から市へ。生産地域を広げて伝統野菜を守る。

「近江の伝統野菜」にも認定されている「守山矢島かぶら」。近江かぶらと赤色系の蕪の交雑種と考えられ、扁球形をしており、地表に出ている部分と茎が紫色、地中に埋まった部分が白色をしているのが特徴です。

目にも鮮やかなこの蕪のルーツは永禄年間(1560年頃)。織田信長が守山市矢島町で寺院を焼き討ちした後、その地に蕪の種を播いたところ、彩りの良いものができたという逸話が残っています。そんな歴史ある野菜ですが、もともとは「矢島かぶら」と呼ばれ、矢島町内でしか栽培されていませんでした。特徴的な蕪の形と色合いは、この町でしか再現できないと思われていたのだそうです。そうした歴史的背景もあり、広く流通することはなく、長い間、地元農家の手によって細々と栽培が続けられてきました。

そんな矢島かぶらの生産に転機が訪れたのは2016年のこと。生産者の高齢化による絶滅を危惧した地元農家と、守山市が発足した「もりやま食のまちづくりプロジェクト」の呼び掛けにより、守山市広域での試験栽培がスタートしました。結果、矢島町以外でも生産できたことから、名称も「守山矢島かぶら」に変更。「守山矢島かぶらの会」が設立され、本格的な栽培・流通の取り組みが始まりました。

子どもたちにも知ってほしい"守山の味"

「守山矢島かぶらの会」には現在、20事業者が所属し、かぶらを生産しています。その面積は約75aで、直売所はもちろん、県内の飲食店やスーパーなどにも卸しています。生産・流通拡大の甲斐あって、守山矢島かぶらは2017年に「近江の伝統野菜」に認定され、2019年には近畿「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」にも選定されました。

「ようやく生産も安定してきましたが、病害虫対策や交配など、まだまだ課題もあります」と話すのは、川田町でかぶらを栽培する吉田昭雄さん。交配を繰り返すと、日野菜や大根のような太さのかぶらができることもあるといい、特徴的な外見を持つ伝統野菜ならではの難しさが窺えます。

「9月中旬頃に種まきをして、早ければ11月下旬から収穫を始めます。蕪のきめが細かいので、漬物やおでん、みそ汁にサラダなど、どんな料理にもよく合いますよ。守山市では、小中学校の給食にも採用していただいており、中でもシチューが人気です。子どもたちやその保護者からも認知を広げ、ゆくゆくは全国で知られる野菜にしたいと思っています」

「守山矢島かぶらの会」では、親子でのかぶら収穫体験や伝統野菜を使った料理教室、小学校への出前授業なども実施。こうした食育活動を通じて、昔ながらの"守山の味"を知ってもらうことがやりがいにもつながっていると、会のみなさんは口を揃えます。

かぶらを収穫する吉田さんかぶらを収穫する吉田さん。この辺りは砂地で水はけもよく、かぶらの栽培に適しているのだとか。

コントラストが鮮やかなかぶら紫と白のコントラストが鮮やかなかぶら。葉の上部10センチ程度はアクが強いため、漬物にする際は切っておくと良いそうです。

特産品から名産品へ。

漬物にすると葉から色が出て、見た目も綺麗に仕上がるという守山矢島かぶら。なんと、もともと葉は食用ではなく、染料として使われていたそうです。

「課題は、新規生産者の確保による生産体制の確立と消費の拡大です。"伝統野菜"としての守山矢島かぶらをまずは知ってもらい、そこから、かぶらで染めたジーンズや風呂敷、小物などを生産できれば、と密かに構想しています。将来的には、守山矢島かぶらを守山市のカラーにしていきたいですね」と「守山矢島かぶらの会」代表の西さんは夢を語ります。守山市の特産品を、全国的に有名な名産品へ。今後の活躍に期待が高まります。

守山矢島かぶらの甘酢漬け「JAレーク滋賀 ファーマーズ・マーケット おうみんち」で販売されている守山矢島かぶらの甘酢漬け。生のままでも甘みがあり、甘酢で漬けることでより味わい深くなります。

かつお節と醤油をかけるオススメの食べ方サラダにして食べるのも良いですが、かつお節と醤油をかけて食べるのもオススメ。鰹節の香りと醤油のコク、かぶらの柔らかく甘い味わいが絶妙です。

(取材日:2021年12月3日)