産地レポート

トップページ産地レポート大津市 近江かぶら 西本忠則さん

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近江かぶら~訪ねた人 大津市 西本忠則さん~

伝統野菜「近江かぶら」を知っていますか?

西本忠則さんと近江かぶら

絶滅寸前の伝統野菜、復活

「菘(すずな)」の別名で春の七草にも数えられ、正月7日には七草粥にして食べられる蕪。中でも今回紹介する「近江かぶら」は、大津の代表的な伝統野菜として、尾花川を中心に約400年前の江戸時代初期から栽培されてきました。

「近江かぶら」最大の特徴は、蕪の部分が扁平で、肉質がしっかりとしており、葉の部分が大ぶりであること。そのため水や肥料の管理が難しいという課題もありました。それでも、昭和30(1955)年頃までは盛んに栽培されていましたが、「聖護院かぶら」など、品種改良された新たなかぶらの登場により生産量は徐々に減少。一度は、栽培しているのが大津市内の一農家だけという、絶滅寸前の状況にまで追いやられたこともありました。

そうした状況を受け、JAレーク滋賀(当時のJAレーク大津)は平成21(2009)年、近江かぶらを地域の特産物の一つとして復活させる取り組みを開始。滋賀県農業技術振興センターが保管していた種子を譲り受け、県や市、龍谷大学などと連携して栽培農家や販路の開拓を続けてきました。

洗った直後のかぶら収穫し、洗った直後のかぶら。原型に近いものは、蕪の中心部分が凹んでいるのも特徴です。

農家として独立、伝統野菜復活の一翼を担う

「おおつブランド育成事業」の一環として始まった復活プロジェクトに参加した一人が、葛川坂下町で農業を営む西本忠則さん。出身は大阪府堺市で、大津市に移住する以前は農業法人に勤めて水耕栽培をしていたそうです。ご先祖の家があるこの地で独立を決意したのが7年ほど前で、2020年から近江かぶらの栽培を始めました。

「8月下旬に種まきをして、11月中下旬より出荷が始まり、11月下旬から霜が降りる12月中下旬までが収穫時期となります。中山間地域に当たるこの場所は昼夜の寒暖差が大きいので、うちのかぶらは甘みも強いんです。一般的な蕪よりもきめ細かい肉質でおいしいですよ」と西本さん。栽培を始めてまだ2年目ではありますが、市からアドバイスを受けながら、少しずつ圃場面積を増やしているそうです。

「病害虫対策として、株間の空気の流れをよくするために間引きの作業が必要なことなど、近江かぶらの栽培には難しさも感じています。でも、だからこそ『伝統野菜を守っていきたい』という思いもあります。大津市内でもまだまだ知名度は低いので、まずはPR活動などを通して知ってもらって、もっとたくさんの人に食べてもらえるようにしたいですね」

大振りな葉のかぶらを収穫する西本さんかぶらを収穫する西本さん。葉は横幅があり大振りなのも特徴です。

煮物や漬物、サラダにしてもおいしい万能種

西本さんが育てた近江かぶらは、道の駅「妹子の郷」や直売所、葛川の日曜市などで販売しています。蕪はクセがなく、きめの細かい肉質で煮崩れしにくいため、おでんなどの煮物や漬物、汁物に最適。葉の部分ももちろん食用で、こちらも苦み・クセがなく、浅漬けやおひたし、サラダにするのがオススメだそうです。また、菱屋町商店街で170年以上の歴史を持つ漬物屋「八百与(やおよ)」では、近江かぶらの長等漬を購入することができます。

まだまだ"知る人ぞ知る"伝統野菜の近江かぶら。道の駅や直売所などで見つけたら、ぜひ手に取ってみてください。

山間の安曇川沿いの圃場西本さんの圃場は山間の安曇川沿いにあります。この冷涼な気候が近江かぶらの柔らかな食感につながります。

近江かぶらのみそ汁近江かぶらのみそ汁。蕪のシャキシャキとした食感が心地良く、自然な甘みはみそ汁全体の味わいをより深くしてくれます。

(取材日:2021年12月3日)