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トップページ産地レポートホウレンソウ 訪ねた人 草津市 木村耕司さん

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ホウレンソウ~訪ねた人 草津市 木村耕司さん~

「草津のホウレンソウ」を全国へ、そして地元へ

草津市 木村耕司さん

営業マン、教員を経て実家を継ぐ

日本には、消費量が多く国民の生活で特に重要とされる野菜が14品目あります。これらは野菜生産出荷安定法に基づき、安定供給が必要と認められる産地がそれぞれ指定されています。草津市のホウレンソウもその1つで、1982年度から指定を受けてきました。
同市の西部、琵琶湖に面した北山田町で農業を営む木村耕司さんは、ホウレンソウのほか、水菜、壬生菜(みぶな)、大根、アスパラガスなど幅広い種類の野菜づくりを展開する専業農家。農家の長男として生まれたため、「いつかは農業をすることになるだろう」と思っていたそうです。しかし、20代のときの経歴は印刷会社の営業マンから学校の非常勤講師と、農家の後継ぎとしては珍しく見えます。
「学生時代の夢は教員だったんです。スーツを着てネクタイを締めて働くのが夢でした。ただ、いつか農地を受け継ぎ就農することは常に頭にありました。そして30歳のときに教え子が卒業したことや子どもが生まれたタイミングで教員を辞めて農業を本格的に始めました」。
以来10数年、木村さんは家族とともにホウレンソウづくりに励んできました。「指定産地」の指定を受けているホウレンソウですが、実は北山田町での出荷量は水菜が上回っています。
「京都の市場では水菜の方が多いですが、全国的な観点ならばホウレンソウが欲しいと思ってくれている人もたくさんいるはずです。指定産地であることで、販売価格が下がったときの補助もありますし、もっと力を入れていきたいです」。

ホウレンソウと木村さん木村さんのおすすめの食べ方は鍋。「ホウレンソウをしゃぶしゃぶにしてお肉と一緒に食べるとさっぱりといただけます」

毎年、新しいことを試したい

木村さんのつくったホウレンソウは、26軒の農家で構成される湖南中央園芸組合のホウレンソウとして出荷されます。個人の名前は大きく表に出ませんが、木村さんは組合の規定の中でできることを模索しています。
「暑さに強い品種、病害虫に強い品種、ルテインの多い品種などいろいろあって、毎年どの品種にするか考えています。そこは個人で工夫できるところなので。基本的に新しいことを試すのが好きですね。収量が良くなかったとしてもそれも経験です」と前を向きます。現在44歳と、組合の中でも若い方になる木村さん、長年ホウレンソウをつくってきた先輩に囲まれる組合は情報共有の場にもなっています。
農業を始めた当初は、営業マン時代に培われた「たくさん売ってたくさん稼ぐ」という精神が強く残っていました。そのほとんどが京都の市場を通して京都や大阪の小売店に並ぶこともあり、どうやったら収量をあげられるかを必死に考えていたとのこと。しかし、機械的に収量ばかりを追うことにしんどさを感じ、"こだわりを持った野菜づくり"へと切り替えていきました。
「生活していくために一定量の出荷で数字を稼ぐことも必要ですけど、余裕を持って次につながる農業をしたいなと。大変そうな姿よりも充実した姿を子どもに見せてあげたいですね」。
木村さんの言う「こだわり」とは何か。それは「地元の人に地元の野菜を食べてもらう」こと。そのために始めたのがSNSでの発信活動でした。

ホウレンソウ今年は、カロテノイドの一種であるルテインを多く含む品種に取り組み始めました

ホウレンソウの出荷準備をする木村さんはさみを使って根元を綺麗に整えてから出荷します

SNSで地産地消につながる発信を

木村さんは、InstagramやFacebookなどのSNSで、生育の様子や収穫した野菜の写真を投稿。
「『これが木村さんのつくった野菜なんですね』と言われた方が嬉しいじゃないですか。消費者の方にも『これが草津のホウレンソウなんだ』と思ってもらいたいですし、こぢんまりとではありますが発信に努めています」。
加えて、草津市には立命館大学、隣の大津市には龍谷大学や滋賀医科大学などのキャンパスがあり、若者に野菜を食べてもらえる機会がある土地。「ここで暮らしている間に草津の野菜を食べて、離れたあとも『草津の野菜はおいしい』と広めてもらえたらありがたいです。もちろん、そのきっかけになるおいしい野菜づくりや情報発信は私の仕事なので頑張っていきたいですね」。

ホウレンソウ畑有機肥料を中心とし、バランスのとれた丈夫な野菜づくりをモットーにしています。

木村さんのインスタグラム木村さんは若者に親しまれているInstagramを使い情報発信を行っています。

(取材日:2021年1月26日)