産地レポート
キャベツ
キャベツ
~訪ねた人:高島市新旭町の畑作農家: 佐々木さん~風土が産んだ、食感が良く甘味もある風車キャベツ。
生で食べると旨みがぜんぜん違いますよ。
長野から新旭町へ入植
琵琶湖の北西、高島市の湖岸沿いを車で北に走っていると、竹生島が間近に迫る手前、田畑が大きく広がるその中に6枚羽根の大きな風車が見えてくる町があります。それが新旭町。今回訪ねる「風車キャベツ」が生産される町です。ちなみに「風車」とは、町にある道の駅(「しんあさひ風車村」)に設置された名物の大きな風車から。風車で有名な町で生産されているキャベツだから、親しみをこめて「風車キャベツ」の愛称が付けられたといいます。
山並みが連なる湖西地域ですが、琵琶湖沿いに広がる新旭町は比較的広い耕作面積があり、早くから農地整備がなされていたこともあって、高島市ではいちばんの農業地帯です。風車キャベツの生産農家である佐々木さんのご自宅と畑は、新旭町の山を少し登ったところ、遠くに琵琶湖が見渡せる高台の井ノ口という集落にありました。
「うちも含め、この井ノ口には4軒の冬キャベツ栽培農家があり、計5~6haを栽培しています」
説明をうかがった佐々木さんは、お父さまの後を継いだ2代目。実はお父さまは、もともとは長野県で農家をされていたのだそう。
「昭和30年頃、滋賀県で農業をする人の求人があり、それに応じて長野から新旭に入植してきました。この井ノ口をはじめ、高島市にはそのような人が多くいますよ。夏にはスイカとメロンを、秋冬にはキャベツを栽培してもう50年になります」
YR錦秋。葉がやわらかく食感もいい。
寒さに耐えて甘くなる
さっそくキャベツ畑に行き、収穫の様子を見せていただきました。山の斜面を切り開いた畑には丸々と育ったキャベツが整然と並び、露を含んだ緑の葉が目に鮮やかです。
「このあたりは、夏は太平洋側気候で、冬は日本海側気候になります。冬が寒く、キャベツが雪の下に埋もれる日も多い。そうするとキャベツは寒さに耐えようと、糖分を出し、甘くなるんです。この甘さが風車キャベツの旨さです。また土壌も赤土系で保水力が良く、肥料持ちがいい。キャベツ栽培には適した気候であり土壌だと思いますよ」
12月のこの時期に収穫しているのは「YR錦秋」という品種。この「YR錦秋」を11月中旬から12月20日頃まで収穫し、年が明けて1月と2月は「夢舞台」を、3月20日頃から4月下旬にかけて「夢ごろも」という品種を収穫して出荷されています。
「大きさもそうですが、葉がしっかり巻いて詰まって固くなっていたら収穫どきですね」
そういいながら、手でキャベツの固さを確かめ外葉を2~3枚残しながら手際よく包丁で収穫していく佐々木さん。
「時代ごとに好まれる食感というものがあるんですね。今はYR錦秋のような、やわらかく食感のいいキャベツが好まれます。うちでも常に、土地の性質や畑の斜面、天候や収穫時期に応じ、最適のキャベツを模索中です」
(左)固さを確かめ、包丁で収穫する。
(右)整然と並んだキャベツが美しい。井ノ口は、平野部に比べ気温が低く、空気も凛と澄んでいる。
重さ別に、箱詰めも美しく出荷
収穫したキャベツは自宅横の倉庫に運ばれ、そこでキャベツの重さ別に、6個入り(1個当たり1.7~2kg)、7個入り(同1.5~1.7kg)、8個入り(同1.2~1.5kg)にして箱に詰められ、出荷されていきます。ちなみに一般のスーパーに並んでいるキャベツは8個入りの小さめのもの。確かに普段見慣れた大きさです。
1個1個重さを測り、箱詰めにして出荷する。
冬場は平均して日に70~80箱出荷できるのだとか。見ていると、キャベツの筋(葉脈)の向きを揃え、見た目もきれいに箱詰めされていきます。 「日本人気質というんでしょうか、箱詰めにも美しさが要求されるんです」と佐々木さんは苦笑しながら、
「でも、食感や味はもちろんですが、見た目が大事なんですよね、キャベツには。だからアオムシなどの害虫は大敵です。でも、農薬はできる限り使いたくない。滋賀県はもともと農薬規制には厳しい県ですが、その基準以上に減らす努力を、フェロモントラップを活用したり土づくりを研究したりと、いろいろ試しているところです」
帰り際、収穫したばかりの風車キャベツを1玉いただきました。どのような食べ方がおすすめでしょう?
「私は生で千切りですね(笑)。それがいちばん旨い」
と、自信のお言葉。でもひとつ問題が。自慢の風車キャベツですが、市場に出荷され、流通に乗ると「風車キャベツ」の名がなくなってしまうのだとか。
「もっと皆さんにうちのキャベツを食べてほしいんですけどねぇ。風車キャベツの名をどうすれば消費者の手に渡るときまで残していけるか、それを目下模索中です」
(取材日:2011年12月6日)
風車キャベツの買える場所
高島市新旭町内の野菜小売店など