産地レポート
トマト
トマト
~訪ねた人:株式会社青友農産・トマト工房代表 徳田さん~食べた人が思わず笑顔になる、
そんなおいしいトマトをつくっています。
トマト工房代表の徳田さん(左)とハウスの管理責任者の夏原さん。
8000㎡もの巨大連棟ハウス!
ひと昔前まで、トマトといえば大玉かプチトマトしか市場で見かけませんでした。ところが最近では、フルーツトマトやミディトマト、黄色いトマトなど、形も色もさまざまなものが出回っていて、食べる楽しみも増えています。中でも最近人気なのが中玉といわれるミディトマト。核家族や一人暮らしが増えたいま、便利な使い切りサイズとしてスーパーでもよく見かけるようになりました。
このミディトマトを主に生産しているのが、滋賀県近江八幡市の農業地帯、大中(だいなか)でトマトを大規模に生産している徳田さんです。
真っ赤に実ったミディトマト。「フルティカ」という品種。
田園が一面に広がる大中で、ひときわ目立つ巨大な連棟のハウスが、徳田さんが経営する青友農園のトマト栽培用ハウス。8000㎡もあるといいます。ふつう、ハウスは各棟が独立していますが、このような大規模な連棟は関西圏では珍しいのだとか。
「連棟の良さは、外気に触れる面が少ないので保温性がいいこと。重油など経費の節減にもなります。うちの農園ではミディトマトが4分の3を占めており、残りが大玉。ひと月に約12t出荷しています」と徳田さん。
少量土壌培地耕で徹底管理
ハウスを見学、という段になり、入念な準備が。靴をはきかえ、手や衣服、持ち物もすべて消毒。その徹底した衛生管理にまずびっくり。
「外から雑菌などを持ち込まないためです。トマトの伝染病はたくさんあるので」と、同行してくださったハウスの管理責任者である夏原さんから説明が。
ハウスの入り口を入ると、「うわぁ!」思わず歓声がもれます。
広々と清潔なハウス内には、トマトの木が整然と並び、畑というより実験室のよう。トマトは地面ではなくプランターに植えられ、色づいたトマトは床近くに実っていて、普通のトマト栽培とはずいぶん違っています。
滋賀県が開発した「少量土壌培地耕」。プランターは1列30mもの長さがある。
これは「少量土壌培地耕」といい、実は滋賀県農業技術振興センターが開発した栽培法。文字通り少量の肥沃な土に苗を植え、水と肥料をパイプで供給しています。
「この栽培法の良さは、水や肥料濃度を生育に応じてすぐに調節できることです。それに、一つの苗が病気になっても、その苗のプランターだけを処理すればいいので、病気を小さな範囲でくい止められる、というメリットもあります。
また、土から漏れた養液は循環させ、再利用しているので外部へ肥料が漏れることもありません。環境にもやさしい栽培法です」
トマトの木は、実をつけながら上へ上へと、放っておくと15mも伸びるといいます。そのため、伸びた枝を下へおろす「誘引」という作業を毎日繰り返します。地面近くのプランターの縁にはぐるぐる巻いたトマトの枝と、色づいた実がいっぱい。
(左)トマトの根元。水と肥料をパイプで供給している。
(右)伸びた枝は葉を取り、下におろす「誘引」作業。
(左)完熟し、色づいたトマトを手で1個ずつ丁寧に収穫していく。
(右)トマトの花。順番に摘花して、最終2個の実を結果させる(大玉の場合)。
「大人のトマト」をつくるのが目標
赤く色づく実を見ていると食欲がムズムズ。
「食べてみますか」との言葉もありがたく、もいでいただいたミディトマトを口に入れると、「甘い!」「おいしい!」と取材スタッフから次々に感嘆の声。みずみずしく、しっかりした肉厚でありながら、皮はやわらか。想像以上に糖分も高くて、ほのかなトマトのかおりも心地よく、爽やかな口当たりです。
「もぎたてのトマトって、こんなにおいしいもんだったんですねぇ」と、都会育ちのスタッフから思わずため息が。
「水分を少なくするとトマトの糖分は高くなりますが、あまりに少なすぎると木の成長が止まってしまう。そのへんのかねあいが微妙で、管理が難しいといえますね」
その微妙な管理を施すため、ハウス内では、温度や湿度、光の入り具合から光合成に必要な炭酸ガスの濃度まですべてコンピュータで自動管理されています。取材中も保温カーテンや斜光カーテンが外気の状態に応じて静かに閉じたり開いたり。完全管理された様子は、さながら工場のよう。
また、「食べて安心」が信条。病害虫に関しては「早期発見・早期予防」を心がけ、薬剤散布をできる限り行わず。常に厳しい目でトマトの健康状態をチェックしています。
(左)大玉の「りんか」。
(右)中玉(ミディトマト)の「フルティカ」。
ところで、4年前から本格的にトマト栽培を始めた徳田さん。それまでは20年間米や露地野菜を栽培してきたので、次はハウスに挑戦したくなり、好きなミディトマトでとびきりおいしいトマトを作ろうと決意したといいます。 そして、食べたひとが心から「おいしい!」と感じ、にっこりと笑顔になるように。そんな願いを込めて、「スマイルトマト」と名付けて販売するようになりました。
では、徳田さんにとって「おいしいトマト」とはどのようなトマトでしょう?
「品種改良が進んだ結果、現在では甘みだけが重視され、ただ甘いだけのトマトが増えているように思います。私は、甘みもですが、酸味もあり、トマトの青くささもしっかりある、いわば大人のトマトを作るのが目標。そして、うちのトマトを食べたみなさんが、最高にいい笑顔になってくだされば、それに勝る喜びはありません」
「丸かじりで、ぜひ旨さを味わってください!」
(取材日:2012年2月23日)