産地レポート

ホンモロコ漁を終えた福阪さんご夫婦

産地レポート
ホンモロコ

ホンモロコ

~訪ねた人:「能登川漁業協同組合」福阪さん~

琵琶湖の春の名産、子持ちのホンモロコ。
魚の旨味がぎゅっと詰まった、上品な味わい!

ホンモロコ漁を終えた福阪さんご夫婦。

琵琶湖の固有種

琵琶湖には、ここだけにすむ魚や貝の固有種が約50種類いますが、コイ科のホンモロコもその一種。琵琶湖の魚の中で「最もおいしい」という漁師さんもいるほどの、高級料亭でも珍重される旨い魚です。

ホンモロコの体長は9~14cmほど。春から秋にかけて沿岸の比較的浅い水域で生活し、水温が下がる冬は沖合の水深60~80mの深層に移動。春の産卵期に群れをなし、再び沿岸を回遊します。産卵期前のものが一番おいしいため、漁も12月~3月に盛期を迎えます。この時期、岸に近づくホンモロコを狙い、竿をたらす釣り人の姿も見られます。

卵をもった春のホンモロコ 卵をもった春のホンモロコ。漁獲量が少なく、いまや高級魚。

3月初旬、雨がちらつく旧能登川町出在家舟溜では、漁師の福阪さんが奥さまと一緒に今朝獲れたばかりのホンモロコを網から外していました。

「今年は冬の気温が低いから、あんまり獲れんねぇ。今日で12か13kgといったところかな」
そういいながら、手際よく網から10cm前後のホンモロコを取り外していきます。

刺網にかかったホンモロコ 網から一匹ずつ外していく (左)刺網にかかったホンモロコ。
(右)網から一匹ずつ外していく。

漁のあとの網の手入れ 漁のあとの網の手入れ。網は1把が12~20mになり、それをつなげて長さを調整する。

ホンモロコは、水中にカーテンのように網を張り、その網に引っ掛かった魚を獲る「刺網(さしあみ)」という漁法が用いられています。網は魚の種類に応じ、そのつど目の粗さや長さなどの種類、設置する場所を変えていくのだとか。

「網は夕方にはえて(張って)、夜中に引き上げにいくんや。強風だったら漁にならんけど、今日みたいな雨だったら風は吹かないし大丈夫やね」
そして、漁港に着く時刻を見計らい、船上から家で待つ奥さんに電話。7時過ぎに漁港で落ちあい、魚を取り外して網の掃除をします。

「ホンモロコは夏や秋にも獲れるけど、やっぱり卵を持っとる"子持ち"が一番うまい! サッと素焼きにして食べると絶品やな」と福阪さんがいえば、奥さんが、
「そやけど、私らはあんまり食べられんねぇ。全部売りもんになってしまうから」と笑います。

福阪さんの漁船 福阪さんの漁船。

資源保護のため、稚魚を放流

ホンモロコは、かつては琵琶湖のどこにでもいましたが、平成7年以降に急速に減少。漁獲量は、ピークの350tから約10tにまで激減しました(平成20年度)。その理由としてあげられているのが、外来魚の増加や、琵琶湖の水位が下がることによって卵が干上がってしまうことなど。滋賀県では、稚魚を放流するなど資源回復に努めており、能登川漁業協同組合のある大同川河口周辺では特に効果がみられているとのこと。

そう説明してくださるのは能登川漁業協同組合の井ノ口組合長。琵琶湖でのホンモロコの保護を強く訴えているお一人です。

「私の父も漁師だったんですが、父の時代にはホンモロコが1日20~30kgも獲れ、しかも高値で取引きされていました。できれば琵琶湖に昔のようなホンモロコの豊漁を取り戻したい。それゆえ、今年は伊庭内湖から大同川にかけて、漁業者によるホンモロコ漁は3月末までとして、4月は禁漁区域とすることを要望し了承されました。
今回の規制には対象外ですが、最近多くなってきたホンモロコ目当てで釣りをされる一般の方にも、どうかホンモロコを増やしたいという思いをご理解いただき、4月の産卵期のものは獲らないでいただきたいですね」

能登川漁業協同組合のある出在家舟溜 伊崎寺のある半島 (左)能登川漁業協同組合のある出在家舟溜。
組合員は約40名。この春は12名がホンモロコ漁に出ている。
(右)湾の奥に見えるのは、「伊崎の竿飛び」で有名な伊崎寺のある半島。

バランスのいい魚

ところで、ホンモロコのおいしさとは、どのようなものなのでしょう?

「小さい魚ですが、骨も硬くなく身も淡白すぎない。丸かじりすると魚の旨味がぎゅっと凝縮されているようで、特に産卵期のホンモロコは、プチプチとした卵の食感も加わり、最高です。味わった時、身と骨と卵のバランスが抜群にいい魚ですよ」と、組合長もそのうまさには太鼓判!

食べ方としては、やはり素焼きにし、軽く塩を振るか酢味噌などで食べるのがおすすめ。その他、南蛮漬け、佃煮などにも活用されます。その味は、普通の淡水魚からはちょっと想像できないほど。ホンモロコ料理を撮影後、別の所で試食した取材スタッフから「想像以上!初めてのおいしさ!」「目から"モロコ"やで!」という声が出たほど。

ホンモロコは琵琶湖沿岸の湖魚販売店などで販売されていますので、ぜひ一度、「目から"モロコ"!!」の味をお試しください。

ホンモロコの素焼き 素焼き。写真のように立てると、身からしたたる脂で頭がカリっと焼き上がります。

(取材日:2012年3月6日)

■ホンモロコのお問い合わせ:滋賀県漁業協同組合連合会(電話:077-524-2418)