琵琶湖八珍のおいしい現場。
ニゴロブナ
コイ科
旬:冬・春(1〜5月)
「マイ・ファーストふなずし」の幸運が待っている。
琵琶湖には数種類のフナがいるが、「ふなずし」の原料になるニゴロブナは琵琶湖固有種だ。魚とお米を乳酸発酵させて作る「なれずし」、その日本代表ともいえる琵琶湖のふなずしほど好き・嫌いが見事に分かれる料理もない。どちらも理由は「あの匂いと酸味」だが、食わず嫌いでそのまま続いている人も多い。
高島市マキノ町の[湖里庵]は、天明4年(1784)創業の[魚治]のふなずしが食べられる料理店として有名だ。「鮒寿し懐石」の先付けをひと口食べた瞬間に、「なんで今まで嫌いだったのだろう」と驚く人が多い。まろやかでふくよかなふなずしが、パスタに和えたり天ぷらになったり、チーズを添えたりして次々と登場。日本酒やワインが進んで仕方がない。店主の左嵜謙祐(ささき・けんすけ)さん曰く「最初に食べたふなずしの印象が大きいのでしょうね。こちらでは小学校の食育授業でふなずしのお茶漬けを出しますが、過去20年間で食べられなかった児童は数えるほどしかいません」。
美味いだけではない。「整腸作用があるんです。子どもの頃、風邪をひくとふなずしをお湯で溶いて食べさせられました。翌日けろっと治っていました(笑)」
ニゴロブナにはふなずしの材料として卵を抱えたメスが重宝されているが、オスの身は旨味が多く、刺し身や煮付けに向いている。