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トップページ産地レポート6月の特集 オウミ木イチゴ&永源寺マルベリー 産地レポート

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2016年6月の特集 オウミ木イチゴ&永源寺マルベリー【産地レポート】オウミ木イチゴ&永源寺マルベリー

甘酸っぱくてかわいらしい「オウミ木イチゴ」、
健康分野でも注目を集める「永源寺マルベリー」、
今、イチオシの東近江の2つのベリーの誕生ストーリーをレポートします。

ここにしかない新品種『オウミ木イチゴ』

滋賀生まれの新品種『オウミ木イチゴ』
滋賀生まれの新品種『オウミ木イチゴ』

目の覚めるような色鮮やかな『オウミ木イチゴ』。ぷっくりとした可愛らしい姿と、艶のあるその輝きに思わず「キレイ」と声が出てしまうほど。滋賀生まれの新ブランド『オウミ木イチゴ』は、ナワシロイチゴとラズベリーの交配によって誕生し、農業生産法人/株式会社あぐりきっずによって生産されています。『オウミ木イチゴ』の特徴は、酸味がしっかりとし、ラズベリーの香りを残していること。

誕生から今年で8年目の現在、『オウミ木イチゴ』生産量は年間400~500㎏になり、そのキラキラと輝くきれいなルビー色と甘酸っぱい風味が評価され、滋賀県内の和洋菓子店でタルトやムースなどに活用され始めています。

花の品種改良の世界的スペシャリストが開発

農業生産法人/株式会社あぐりきっずの代表・坂嵜さん(左)と栽培責任者の黒川さん(右)
農業生産法人/株式会社あぐりきっずの代表・坂嵜さん(左)と栽培責任者の黒川さん(右)

『オウミ木イチゴ』を生み出したのは『農業生産法人/株式会社あぐりきっず』代表の坂嵜潮さん。もともと坂嵜さんは、世界的なガーデニングブームの火付け役として有名になった花を生み出した、園芸植物の品種改良のスペシャリスト。「滋賀は果樹の産地ですが、オリジナル品種がなく知名度は低いんですよ。だからこそキラリと光る品目を開発して、滋賀をもっと知ってほしい」。そんな熱い想いから、2006年に『オウミ木イチゴ』という新品種が開発されました。「収穫期になると木イチゴが"採ってちょうだい"と言っているような鮮やかな色になるんですよ」と坂嵜さんも子どもを愛でるような表情で話されます。

無農薬・無化学肥料栽培で未来を創造

6月下旬を迎えてたわわに実る『オウミ木イチゴ』
6月下旬を迎えてたわわに実る『オウミ木イチゴ』

「これから無農薬・無化学肥料の農産物へのニーズが確実に大きくなる」という考えから、『オウミ木イチゴ』はすべて無農薬・無化学肥料で栽培されています。『オウミ木イチゴ』自体、比較的虫がつきにくいためそれほど大きな影響がないのだとか。「虫が来ても、もう好きにして!という感じで、自然に任せています」と栽培担当の黒川さんは笑います。

『オウミ木イチゴ』の生産に踏み切ったのは「無農薬・無化学肥料で栽培でき、管理に手間がかからないうえ他の農作業との無理のない組み合わせが可能だったから」と話す坂嵜さん。

株式会社あぐりきっずの代表・坂嵜さん

『オウミ木イチゴ』の収穫期となる6月下旬は、田植えが終わって労働力が空く時期。7~8人でも朝から晩までかかる収穫作業に人員をうまく回しているそうです。「栽培の効率化が農業における高齢化や後継者不足の危機を救い、農業放棄地対策にもなると信じています。」と坂嵜さんは未来を見つめます。

健康分野でも注目される「永源寺マルベリー」、懐かしい、やさしい甘みの「桑の実」

懐かしい、やさしい甘みの『桑の実』。たわわに実った桑の実。黒くなると食べごろです
たわわに実った桑の実。黒くなると食べごろです

マルベリーとも言われる『桑の実』。昔は日本にもたくさん生えていました。そっとつまんで口に含むと、何とも言えない、懐かしいような、ほっとするようなおだやかな甘さが体にしみわたります。冷凍してシャーベットにして食べても、桑の実のビネガーシロップ(農家レシピのコーナーで紹介)にして飲んでも、「おいしくて体にやさしい」ベリーです。

茶畑を活用して桑の生産

桑の実と永源寺マルベリー代表の吉澤さん
桑の実と永源寺マルベリー代表の吉澤さん

東近江市永源寺地区で『桑の実』を生産しているのが、有限会社永源寺マルベリーの代表・吉澤克美さんです。昭和30年代、養蚕が盛んだった永源寺地区で、蚕のエサとなっていた桑の葉。その栄養価の高さに着目した吉澤さんは、過疎化や耕作放棄された茶畑の活用のため、桑の葉の生産をおこなう永源寺マルベリーを2005年2月に立ち上げました。

しかし周囲からは、「桑の葉なんか作って、また蚕でも飼いよるんか?」と、はじめのうちはなかなか理解されなかったと言います。商品化も難航し、吉澤さんは桑の葉の粉末を手に、営業のため全国を駆け巡る日々。さらに鹿による獣害も発生。なんとか商品化まで到達するも販売は不調と、苦難の日々が続きます。それでも、桑の持つ可能性を信じ続けた吉澤さん。今では桑の粉末の出荷量は年間16トンにまで達するようになりました。

そして吉澤さんは、更なる可能性を求めて、今まで着目してこなかった『桑の実』の生産を4年前にスタートしました。吉澤さんが栽培している桑は中国の大唐桑と日本の桑をかけ合わせたもので、たくさんの大きな実をつけるのが特徴です。アントシアニンなども豊富なため健康・美容分野でも注目を集めています。

夫婦のあくなき研究意欲と地域への広がり

永源寺マルベリーの吉澤さんご夫婦
永源寺マルベリーの吉澤さんご夫婦

永源寺マルベリーでは、平成27年の夏から、八日市南高校と連携し、新メニューの開発を始めました。高校生達の試行錯誤の結果、桑の実のジャムやクッキーなどが完成、道の駅や八南レストランなどで市販され好評を得るとともに、全国農業高校収穫祭にも出展し、新規性と機能性で注目を集めました。
さらに、高校生達からの「生産現場を知らずに加工するだけでは物足りない」との意見から、平成28年度には、桑の実の収穫体験がスタートしました。

収穫時期の6月上旬には、たわわに実った『桑の実』が畑を彩ります。「桑の実の特徴を活かすことで新たな商品開発を」と意気込む吉澤さん。夫婦ふたりを中心に、地域の高校生も巻き込みながら、日々研究が続けられており、今後ますますの輪の広がりが期待されます。

これまでも、これからも

新品種の栽培が耕作放棄地の対策に
新品種の栽培が耕作放棄地の対策に

『オウミ木イチゴ』も、永源寺マルベリーの『桑の実』も、これからの可能性を存分に秘めています。「商品化に向けて様々な企業と積極的にコラボレーションしていきたいですね」と、どちらの生産者さんも口を揃えます。

「過疎化と高齢化の問題を解決し、地域のために何とかしたい」「おいしくて、良いものを作りたい」との熱い思いから生産がスタートした、2つのベリー。 これからも、ぜひ、応援してください。

興味のある方は、ぜひお問い合わせを! 購入希望の方には、冷凍保存した『オウミ木イチゴ』と『桑の実』の販売を行っているとのこと。

【オウミ木イチゴ】

農業生産法人 株式会社 あぐりきっず
住所:滋賀県東近江市大沢町398
電話 :0749-45-0155

【桑の実】

農業生産法人 有限会社 永源寺マルベリー
住所:滋賀県東近江市永源寺高野町201
電話: 0748−27−0772