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2017年10月の特集 近江しゃも【産地レポート】近江しゃも

産地レポート 近江しゃも

滋賀の高級鶏肉として知られる『近江しゃも』。脂肪分が少なく、ぷりぷりで、コリッとした歯ごたえのある肉質と旨みが特徴です。
滋賀県では、平成6年に「近江しゃも普及推進協議会」が発足し、同会員の養鶏農家によるヒナの飼育が始まりました。今回、近江しゃも普及のスタート当時から飼育に携わってきた杉本加寿男さんと寛さん親子が営む養鶏場へお邪魔してお話をお伺いしました。

赤いとさかのある方がオス、とさかのない方がメス。
赤いとさかのある方がオス、とさかのない方がメス。

自然あふれる地で、のびのび育つ『近江しゃも』

竜王山の北東に広大な自然が広がる竜王町山之上。周辺には牧場や果樹園が点在する緑豊かな一帯です。ここに杉本さん親子が営む養鶏場があります。入口からなだらかな坂道を登った先に8棟の鶏舎が建ち並び、現在、近江しゃもや名古屋コーチンなどを飼育しています。

近江しゃもとは、肉づき、肉質が優れたロードアイランド種(オス)×卵をよく産み味のよい横斑プリマスロック種(メス)の掛け合わせでできた子供(メス)に、最高の肉質と言われるしゃも(オス)を掛け合わせた種で、高品質の肉質を追求した鶏です。杉本さんは、毎月450羽のヒナを入雛させ、約150日~180日かけて飼育し、年間5,000羽を出荷しています。

緑豊かな小山の中に建てられた鶏舎。風が通り抜ける快適な環境。
緑豊かな小山の中に建てられた鶏舎。風が通り抜ける快適な環境。

ストレスを与えない環境づくりへ

鶏舎内を覗くと、まず、近江しゃもの大きさに驚かされます。通常の鶏の2~3倍ほどあり、首がスッと伸びて長く、堂々とした姿です。食用に品質改良されていますが、もともと軍鶏(しゃも)は闘鶏用のため気性が荒く、筋肉質で体格が良いのが特徴です。地面の上で放し飼いをする「平飼い」で育てられているので、運動量が多く、適度に筋肉がつき肉質が良くなり、また、運動することでストレスを与えないようにしているそう。ストレスがたまると鶏自体が大きく育たず、肉質にも影響するので、ストレスは大敵です。

 『近江しゃも』は1平方メートル当りの飼育数など、飼育方法が細かく決められている。
 『近江しゃも』は1平方メートル当りの飼育数など、飼育方法が細かく決められている。

よく見ると鶏舎内は灯りがないのでその理由を尋ねてみると、「ケンカしないようにするためです。明るいとケンカをしやすいので、落ち着かせる意味もあって暗くしています」と息子の寛さん。闘争心の強いオスはメスを攻撃することがあるので、鶏舎内ではオスとメスの間を柵で区切り、ケンカができないようにしているそうです。

「なるべくストレスを与えないよう気配りしながら飼育しています。ケンカをさせない環境づくりはもちろんですが、温度や湿度の調整など快適な環境づくりをきめ細やかに行っていますね」と寛さん。エサと水やりは自動化されており、一日の作業の大半は環境を整えてあげること。環境が悪いと育ちが悪くなるばかりか、病気を引き起こす原因にもなるので、環境づくりは気の抜けない作業です。

一日の始まりは、まずは鶏舎の様子を見て鶏に異変がないかを入念に確認します。その後、鶏舎のそうじをして清潔に保つことで病気の発生を抑えます。寒いときはシートで鶏舎を防寒して暖かくし、暑いときは扇風機で風を送り、木製チップを入れて湿気を防いだりと、鶏が心地よく暮らせるよう温度湿度の管理を行います。

これら作業の合間をぬって、ヒナのくちばしの先が丸くなるように処理したり、予防注射をしたり、ヒナたちへの世話も行います。鶏のくちばしは成長とともに尖って鋭利になってくるので、お互いに他の鶏を傷つけないようにヒナの段階でくちばしの先を丸くなるように処理するのですが、これも1羽1羽の作業となるので手間がかかります。

入雛20日後のピヨピヨと鳴き声の可愛いヒナ。
入雛20日後のピヨピヨと鳴き声の可愛いヒナ。

くちばしの尖りがなくなっている。
くちばしの尖りがなくなっている。

近江米や滋賀の大麦など地元産のエサにこだわっています

杉本さんの鶏舎では、エサにもこだわりがあります。エサは飼料メーカーや鶏の販売店などとも相談しながら指定配合したエサを与えていますが、滋賀県産の米や大麦の他、海老粉を細かくくだいてエサの中に混ぜています。「米は品質向上のために、大麦は旨みが増すために、海老粉は肉色を良くするために使っています。米と大麦は地元の農産物なので、自分たちで安全が確認でき安心して使えます」と父・加寿男さん。

近江米や滋賀の大麦など地元産のものを混ぜている。
近江米や滋賀の大麦など地元産のものを混ぜている。

オスは食感、メスは脂ののったやわらかさを楽しんで

『近江しゃも』の美味しい食べ方を聞いてみると、「滋賀県では、すき焼きか、鉄板焼きにして食べるのが一般的で、美味しいと思いますね。脂肪分が少ないのに旨みがあり、コリコリとした歯ごたえがあるので、鶏そのものの味を楽しめます。鶏ガラからいいスープが出るので、このスープでカレーを作ると絶品ですよ!」と寛さん。「オスは筋肉質で歯ごたえが楽しめます。メスはオスよりもやわらかいですね。季節で言うと秋から冬場は、脂がのって美味しくなります」。

飼育時に苦労する点を伺うと、「鶏独自の病気が何種類もあるので、病気にかからないよう予防に注意しています。靴を消毒して鶏舎に入ったり、こまめに掃除したり、衛生的に管理するように努めています」。
逆にうれしいことは元気に育った『近江しゃも』を出荷するとき。「鶏は育つ環境によって、体調や成長に大きく影響します。環境が悪いとガリガリになることもあるので、元気いっぱいに育てて、ぷりぷりの鶏に成長させたいですね」と、やさしい笑顔で語ってくれました。

『近江しゃも』愛を語る息子の杉本寛さん。
『近江しゃも』愛を語る息子の杉本寛さん。