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近江牛

<近江牛> ~訪ねた人~「拝藤牧場」拝藤さん

誰もに「おいしい」といってもらえる、立派な「近江牛」に育て上げるため、日々勉強です。

丹誠こめて育てあげた牛と一緒に。拝藤牧場の拝藤さん。

育て方しだいで肉質が良くなる面白さ

近江牛とは、「豊かな自然環境と水に恵まれた滋賀県内で最も長く飼育された黒毛和種」と定められています。現在、約90戸の近江牛の肥育農家がいますが、そのうち約35戸が大中(だいなか)地区に集中しています。大中地区は、以前は琵琶湖の大きな内湖(大中内湖)があった所。昭和40年代初めに大規模な干拓が行われ、稲作など農業をするために大勢の人が家族連れで入植しました。

「このあたりは寒暖の差が激しいので、肉のしまりがいいように思えますね。水もきれいだし」と、その1軒である拝藤牧場の拝藤さん。

清潔な環境のなかで育まれる近江牛。

湖西から入植した拝藤さんのお父さんは、国の減反政策により昭和45年頃に稲作から肉牛農家へと転換。当時高校生だった拝藤さんも卒業後家業を手伝い、当初30頭ほどだった牛を、平成元年には和牛90頭、ホルスタイン90頭になるまで増やしました。

ところが平成13年にBSEが日本国内で発生します。
「BSE問題の影響で、牛肉の価格が半値くらいに下がり、先の見通しが立たん。どうせやったら好きな和牛の世界で生きてみたいと、思い切ってホルスタインはやめてすべて和牛にしました。
和牛は、血統や育てる環境、そして手間のかけ方で肉質が良くなり、価格に反映されます。要は自分の考え方、育て方しだいで。そこが面白い」

拝藤牧場では現在、240頭の和牛を肥育。出荷される近江牛は肉質が良く味がいいと評判で、多くの品評会で優秀な成績をおさめています。

まずは丈夫な胃袋作りから

拝藤牧場では、生後9カ月くらいの子牛を仕入れ、20~22か月間育てています。

「子牛は、一頭一頭、体格も性格も違います。どのように育てればいい肉牛になるのか、毎日が勉強の繰り返し。新しい子牛が来るたびに1年生を迎える小学校の先生のような気持ちになるんですよ」
拝藤さんはそういいながら、牛の背中を優しくさすります。

拝藤牧場に来た子牛は、最初に牧草やワラといった"粗飼料"と呼ばれる繊維質を多く含むエサをたっぷり与えられます。これは、丈夫な「胃袋」を作るため。粗飼料とあわせ、ビタミンやミネラル豊富なエサを与え、何度も反芻して栄養分を十分に吸収できる良い腹を作っていきます。

「よく、霜降りとかサシの入った肉、というでしょう。 "サシ"とは肉と脂肪の入り混じった状態のことで、このサシが全体に細かく入るのが近江牛の大きな特徴です。牛の成長する過程で最も多くサシ入る時期に栄養たっぷりのエサをたくさん食べさせるのが秘訣で、そのためには事前に丈夫な胃袋を作っておく必要があるんです」

「腹づくりができると、トウモロコシや麦、大豆粕などを自分で配合して与えます。多い時期には1日10kg以上も食べるんですよ。重労働やけど、一頭一頭、食欲や消化の状態、骨格など毎日の成長を確認して与える量を調整します。」

(左)高く積み上げられたエサの稲ワラ
(右)稲ワラは、大中地区で収穫されたものを積極的に使用。

そして気遣いと愛情

拝藤牧場で感じたのは、牛舎が開放的なこと。風がよく通り、外光もふんだんに入り込み、牛舎は清潔で、牛もリラックスしているよう。大切な牛にストレスを与えないよう、心地良さに配慮した拝藤さんの気遣いと愛情が感じられます。

一頭一頭、牛の状態を見ながらエサやり。

拝藤牧場では、奥さんと息子さんも肥育に携わっています、特徴的なのは、それぞれ自分が担当する牛舎があること。肥育方法は基本的に同じですが、子牛から出荷するまで、自分が思うように世話できるので肥育にも自然と熱が入るといいます。

「自分が育てた牛にいい値がつくとうれしいしね。張り合いが出るというもんです」と拝藤さんは笑います。

近江牛の産地を支え合う

取材した日は、拝藤さんの息子さんが所属する「近江大中牧友会」の定期巡回の日。息子さんに同行させてもらい、田井中牧場で行われた定期巡回の様子も取材させていただきました。

「近江大中牧友会」は、大中地区の牧場約10軒の若手が中心となって結成している会。
「私たちの親世代に負けない、おいしい近江牛をつくるためには、個人の努力だけではダメなんです。みんなで協力していかないと」とメンバーは意気込みます。

牛を目の前に意見を交わす近江大中牧友会メンバー。

生産指導を行うJAの職員や飼料会社の専門家も一緒に巡回されています。専門家の人たちは、生産現場を見ながら牧場主の相談にのり、また、何か問題はないか、牛の成長や体調などをチェックしているのだそう。

エサや健康状態をチェックする定期巡回のスタッフ。

「牧友会の皆さんは熱心で優秀ですよ。もっともっと技術を高めて「近江牛」ブランドを伸ばして欲しい」と、定期巡回のJA職員も熱い期待を寄せています。

定期巡回のスタッフと近江大中牧友会のメンバー。
巡回先の田井中牧場にて、田井中さん(下段中央)を囲む。

期待される品質を届けていきたい

「目指しているのは、あたりまえですが、食べていただいておいしいと思っていただけるお肉です。近江牛は、ありがたいことに先人が培ったブランドがあります。それを汚すことなく、お客さんが期待する品質をお届けしていきたい。そのためには、日々勉強です」

拝藤さんと息子さん、奥さま
互いが良き相談相手であり、競争相手

■近江牛に関するお問い合わせ:「近江牛」生産・流通推進協議会(電話:0748-37-2635)

(取材日:2012年1月25日)

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