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セタシジミ

<セタシジミ> ~訪ねた人 「彦根市松原漁業協同組合」組合長 中山さん~

琵琶湖の冬の名物、寒シジミ。味噌汁にして毎日食べると元気になるよ!

中山さんはセタシジミ漁歴66年の大ベテラン。

セタシジミは琵琶湖の固有種

冬から春にかけ、琵琶湖ではセタシジミ漁が盛んに行われます。この時期のセタシジミは「寒シジミ」と呼ばれ、身が肥えておいしくなります。特に産卵を控えた3、4月のシジミが最高だといわれています。

日本には、ヤマトシジミ、マシジミ、セタシジミの3種類の在来シジミが生息していますが、その中でセタシジミは琵琶湖水系だけに棲む固有種。コクのあるその味は昔から琵琶湖特産として広く知られています。

セタシジミは、昔は瀬田川付近で多く獲れたことからその名を冠していますが、多くは琵琶湖全域の水深10数mまでの水域の砂地を好み生息しています。現在、セタシジミの漁場は、びわ湖大橋から北湖一帯で、中でも彦根の松原沖は古くからシジミ漁で知られた水域。

彦根市松原漁業協同組合は、観光船が発着する彦根港のすぐ隣、彦根城の堀と琵琶湖をつなぐ水路脇にありました。組合員は現在23名。中でシジミ漁をするのは3名だけ。その一人、組合長である中山さんにお話を伺いました。

旧彦根港内のシジミ漁をする船で。
かつては30数隻あった船も今は数隻だけに。

「シジミはなあ、昔はそりゃあ、ようけ獲れたもんや。琵琶湖はどこへ行ってもシジミだらけで、シジミが層になって底におる。獲れ過ぎて船が引っくり返りそうになることもあるほどやった。

1日に12貫(45kg)のシジミを詰めたカマス(藁むしろを二つ折りにして作った袋)が10本以上になるのもざらで、シジミは半分は殻付きのまま、半分は茹でてむき身にして、トラックに積んで京都へ毎日運んどった」

セタシジミ漁歴66年、今年85歳の中山さんのお話はシジミ漁が最盛期だった頃から始まりました。昭和30年頃までは、この松原周辺では少し砂を掘り返すだけで誰でも簡単にセタシジミを見つけることができたといいます。

ところが琵琶湖の環境変化などにより、セタシジミの漁獲量は昭和30年代前半の6000t超をピークに急激に減少。今では約60t前後にまで落ち込んでいます。松原漁協でも、半日漁に出てもせいぜい10~30kgしかとれない日が多いといいます。

明るいべっ甲色が彦根松原沖のシジミの特徴

漁港で今朝獲れたばかりのセタシジミを見せてもらいました。茶色や黄色、赤みがかったものなど、。予想していた「黒」ではなく、ずいぶん明るい色にびっくり。

殻に厚みがあり、ぷくっとふくれているのがセタシジミの特徴。
松原沖で獲れるものは明るいべっ甲色をしている。

「殻の色の違いは生息地の違いや。砂地におるシジミは色がべっ甲飴というか茶色のようになるし、泥地のシジミは黒ぅなる。この松原周辺は砂地が多いからこんな飴色が多いんや」と中山さん。

彦根市の松原は白砂が続き、水泳場としても有名な場所。湖底にも沖合2キロぐらいまで砂地が続き、そこから泥地に変わっていくそうですが、セタシジミはその砂地と泥地の境目あたりでよく獲れるのだそう。その殻の色合いから、「べっ甲シジミ」という俗称もあるそうです。

ヤマトシジミやマシジミに比べ、セタシジミの特徴は、第一に、ぷくっとふくらんだ殻の厚み。さらに、殻の扇形に広がる角度も狭く、形も左右対称ではなく、いびつ。

セタシジミは、滋賀県では子どもの貝である15mm以下のものは禁漁にしていますが、漁師さんたちは、さらに厳しく18mm以下のものは獲らないようにしています。また産卵期である5月から7月も禁漁です。

「通し」と呼ばれる道具で大きさを選別。
基準に合わない小さなシジミは湖へ帰す。

漁具に藻や水草がからみつくので、それをを取りのぞくのも作業の一つ。実はいま、琵琶湖の漁師を悩ませているのが、外来魚とともに湖底にはびこる水草の問題。
「岸から見るとわからんけど、湖の上で見ると水中にはびっしり藻が繁っとる。これでは漁にならん」と中山さんも渋い顔。

網に絡み付く藻の駆除は一苦労。
左に見える鉄枠がセタシジミを獲るタモ。

肝臓の特効薬

シジミは、鉄分などのミネラルや旨みのモトであるコハク酸が多く含まれており、小さくてもコクがあります。このためシジミ汁は昔から二日酔いや黄疸に効くといわれて重宝されています。
琵琶湖近くの家庭では、かつて朝はシジミの味噌汁が一般的でした。中山さんはもちろん今でも朝はシジミの味噌汁を必ず食べ、冷凍庫にはいつでも食べられるようにシジミをストックしているのだそう。

最後に中山さんに秘伝のシジミエキスの作り方を伝授してもらいました。 「シジミだけを鍋に入れ、乾煎りして出てきたシジミの白い汁をさらに飴色になるまで煮詰める。これが肝臓の特効薬になる」

身軽に船に乗り、シジミ漁の様子を説明してくださる中山さんの姿はまさに、シジミパワーの賜物といえそう。

年々減り続けるセタシジミ。そのような現状を何とかしようと、滋賀県では数年前からセタシジミの仔貝を放流する事業を開始。その親貝には松原のシジミも使われています。セタシジミが再びどこでも大量に獲れる、そんな日がいつか来ることを願ってやみません。

■セタシジミに関するお問い合わせ:滋賀県漁業協同組合連合会(電話:077-524-2418)

(取材日:2012年1月18日)

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