産地レポート

トップページ産地レポート滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)

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甲賀もち工房代表取締役の河合さん

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滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)

滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)

~訪ねた人:「甲賀もち工房」代表取締役 河合さん~

"日本一のもち米"と昔から評判の「小佐治のもち」――。
つきたてのもちの粘りと旨さを味わいに来てください。

滋賀羽二重糯を中心に、次々に斬新な米商品を生み出している「甲賀もち工房」代表取締役の河合さん。

古琵琶湖の土壌が旨さの秘密

滋賀県の南東、忍者で知られる甲賀市に、「日本一」と称されるもち米がとれる小佐治(こさじ)という集落があります。ここで収穫されるもち米は「滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)」という品種で、「幻のもち」として全国でひっぱりだこ。昭和27年からずっと正月用の餅として昭和天皇陛下に献上し続けてきた、という歴史もあります。

「最高級のもち米ができる要因は、小佐治地方独特の土壌にあります。ここは300万年前、琵琶湖があった所。このあたりは琵琶湖の底だったわけで、そのときにミネラル分を豊富に含む重粘土質の土が大量に堆積しました。この土がもち米と、特に滋賀羽二重糯と相性が良く、ねばりと伸びがあり、キメが細かく甘味のある絶品のもち米を生みだすようになったんです」

そう説明してくださるのは、「甲賀もち工房」の河合さん。「甲賀もち工房」は、小佐治集落61名の出資による農業法人。滋賀羽二重糯を地元の特産品として加工・販売し、地域の活性化に取り組むために設立されました。
ちなみに琵琶湖はその後も長い年月をかけて移動し続け、現在の位置になりました。

滋賀羽二重糯は、昭和14年に滋賀県で開発された品種滋賀羽二重糯は、昭和14年に滋賀県で開発された品種。
米本来の旨味を残すため、火力を使わない脱水分装置で自然そのままに乾燥されている。

"もち"を地域おこしの起爆剤に

地元で「ズリン」と呼ばれる重粘土質の土は青みがかった独特の様相をしており、小佐治の田や山を少し削れば簡単に顔をのぞかせます。この土壌で育てられた稲は粒張りも質も良く、ねばりとコクを持ち、特にもち米の栽培に適しているとあって昔から「小佐治のもち」として知られていました。
また、ミネラル分が豊富で化学肥料にあまり頼らなくても地力で米が作れるため、小佐治では早くから減肥料や減農薬に着手。現在、小佐治のもち米は滋賀県の『環境こだわり農産物』認証を受けています。

ただ、この重粘土質の田んぼは、粘りが強いうえに排水が悪いので機械が使いにくいし、泥田では長靴がなかなか抜けないし...。農作業は大変な苦労を伴うのだとか。
加えて約60種以上もあるもち米の品種の中で最高級のもち米とされる滋賀羽二重糯もまた、栽培するにはかなり手ごわい品種。
「背丈が高いので台風などで倒れやすいし、穂もこぼれやすく、収穫量も他の品種に比べて少ない。苦労が多いわりに実入りが少ないと栽培を敬遠する農家も多く、収穫量も減少傾向で、"幻のもち"と呼ばれています」

とはいえ、滋賀羽二重糯による「小佐治のもち」は地域の伝統ある名物。いっそのこと、評価の高い小佐治のもち米を地域活性化の中心に据えようと、平成6年、集落に「甲賀もちふる里館」を設立。収穫した滋賀羽二重糯を中心にした地域住民による特産品づくりがスタートしました。現在では隣接して軽食もとれる「もちもちハウス」も建設。つきたてのもちを、さまざまなメニューで味わうことができます。

人気商品よもぎ餡もちいちばんの人気商品「よもぎ餡もち」。新鮮なよもぎの風味は格別。小佐治では地域住民が創意工夫をこらして、もち米の生産管理から製品作り・販売まで一貫して行っている。

多様な商品を開発・販売中

「もちもちハウス」で、さっそく名物のおもちを味わうことにしました。まずは定番のつきたてもちを。なるほど、伸びること伸びること!粘りがあってキメがなめらかで、甘味もあり上品。他にも、しゃぶ餅すまし汁やぜんざい、もちワッフルなど、メニューもバラエティ豊か。驚くのは、米粉を用いたパスタやロールケーキなど、米を原材料にした多彩な加工品があること。

「いま人気なのは米粉たい焼きですね。皮がもっちりかつパリッとしておいしいんですよ。ベーコンやチーズ、ウインナーなどが入った『朝食たい焼き』などいろんな味が楽しめて面白いですよ」と河合さん。
確かに、取材中もひっきりなしに人が買っていく盛況ぶり。他にも米粉のロールケーキや、地元産のいちじくジャムなどを用いた地産地消の米粉どら焼きも注目のマト。

「お客さんに飽きられないよう、毎年新しい商品を開発しています(笑)。甲賀を通ったら、どんな商品があるか、ぜひのぞきに来てほしいですね。そして、米の消費をもっと増やし、農家に元気を、活気を取り戻したい。それが私たちの究極の願いです」

現在、滋賀羽二重糯の栽培農家は約30軒に増え、休耕田では「よもぎ餡もち」用のよもぎが栽培されるなど、地域一丸となったさまざまな取り組みが展開中です。また、新鮮で極上の作りたてもちが味わえるとあって、県内外からの「もちもちハウス」への来場者も増える一方。「季節に応じ、もちつきなどさまざまな楽しいイベントも開催していますので、お出かけの際はHPをチェックしてお立ち寄りください」とのことでした。

滋賀羽二重糯による商品 豊かに実った滋賀羽二重糯と栽培農家の皆さん (左)滋賀羽二重糯による商品の数々。「近江米めん」は、滋賀羽二重糯のもち米やうるち米キヌヒカリの米粉を利用している。
(右)豊かに実った滋賀羽二重糯と栽培農家の皆さん。地域が一体となった取り組みが評判を呼び、小佐治集落は平成14年度豊かなむらづくり全国表彰事業で「農林水産大臣賞」を受賞した。

(取材日2011年11月24日)

「甲賀もち工房」のもち米やもち商品が買える所

農業法人「(有)甲賀もち工房」(電話:0748-88-5841)、道の駅「あいの土山」、新名神高速道路「土山サービスエリア」、JAグリーン「花野果市」など