産地レポート

トップページ産地レポート水菜 訪ねた人 草津市 横江敏和さん

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水菜~訪ねた人 草津市 横江敏和さん~

西日本最大のハウス団地を支える水菜

草津市 横江敏和さん

漬物野菜からの転換

草津市西部の琵琶湖に面した北山田町には、遠くから見ても分かるほどにビニルハウスがずらりと並びます。その数はなんと約2,000棟で、西日本最大の規模。約40年前この地にハウス団地ができ始めた頃からつくられている野菜の1つが水菜で、今では地域の主力作物になっています。ホウレンソウの指定産地ではありますが、つくりやすさや市場の需要の伸びもあり、昨年(2020年)は同町の全体で年間約705トンもの収量を挙げています。同町で約25年農業を営む横江敏和さんは、ハウス30棟を所有する専業農家。長く壬生菜(みぶな)や日野菜などの漬物商材をつくる家でしたが、需要が減ってきたこともあり15年ほど前から水菜を始めました。地域ですでに水菜の販路は開拓されていたのと、マヨネーズのCMに使われ需要が伸びていたこともあり、すんなりと参入できたようです。ネギやメロンなど他の作物と圃場をローテーションしながら、年間約20作の水菜栽培をしています。ハウスでの通年栽培ですが、夏と冬では収穫までの期間が異なり、夏は35〜40日ですが、冬は60〜70日かかります。
「生育状況や土の状態を見ながら水の管理をしています。土の養分を吸いすぎて濃い緑色になった頃には味が落ちてしまうので、収穫適期を逃さないことですね。適度であっさりした黄緑色が理想です」。

収穫したばかりの水菜収穫したばかりの水菜。「このくらいの色が理想」と横江さん

有機肥料で甘みのある水菜を

横江さんのこだわりの1つが有機肥料の使用です。魚を原材料にした有機肥料で、豊富なアミノ酸の効果で水菜にも甘みが出るとか。収穫直前には畝の土を覆い隠すほどの一面緑になり、そんな圃場を見られることが水菜づくりのやりがいだと言います。堆肥に加えて有機肥料も使った丁寧な土づくりもあって、横江さんの水菜は京都の市場でも高く評価されているそうです。良い水菜は葉の色だけでなく、茎の柔らかさや根元の量感にも優れています。北山田町の水菜は生産者の名前が見える形で市場や店頭に並びます。長さ40cmほどの袋に数本ずつ詰めての出荷ですが、年間約40,000袋分を横江さん自ら手作業で行っているのです。
「今の出荷先は市場だけですが、この近くには直売所や道の駅もあるので、いずれはそちらにも出荷できるようになったらいいなと考えています」。

地面から広がるように伸びる水菜を鎌で刈って収穫地面から広がるように伸びる水菜を鎌で刈って収穫します

冬は冷たい風から守るために農業資材のタフベルを被せた水菜冬は冷たい風から守るために農業資材のタフベルを被せています

30年後も残る水菜の産地に

横江さんは湖南中央園芸組合の販売部として市場に出向き、組合の野菜を売り出すための宣伝活動にも取り組んでいます。北山田町には現在約140軒の農家がおり、そのうちの約30軒が組合に所属しています。しかし、これほどの大規模な施設園芸農業が展開されているこの地でも、後継者の問題は発生しています。20代、30代の農家が数えるほどになった状況でも、法人化しているところが中心となって新規就農者を受け入れ、地域の課題に向き合っています。
「北山田町のほとんどの農家が水菜をつくっていて、農家がそれぞれこだわりを持って取り組んでいます。ここでは約40年水菜がつくられてきました。私自身はまだ15年ではありますが、20年後や30年後も水菜を売っていきたいですし、この町が産地として残り続けてほしいですね」。

家族とともに水菜の袋詰め作業をする横江さん家族とともに水菜の袋詰め作業をする横江さん

水菜のかき揚げサクサクした食感が楽しめる水菜のかき揚げ。シンプルに塩をかけて食べるのが横江さんのおすすめです

(取材日:2021年1月26日)