産地レポート

トップページ産地レポートスイカ 高島市「ファームささき」佐々木宏さん

トップページ産地レポートスイカ 高島市「ファームささき」佐々木宏さん

スイカ~訪ねた人 高島市「ファームささき」佐々木宏さん~

“耕すミュージシャン„のスイカ

「ファームささき」佐々木宏さん

スイカはそのまま食べるのが一番

「ウチのスイカは十分に甘いので、塩はかけず、そのまま食べてください」と自慢のスイカの食べ方を教えてくれたのは、高島市新旭町で大玉スイカ「味きらら」をつくっている佐々木宏さん。食べてみると、シャリシャリとしたスイカ特有のあの食感の中からじわっと出てくる甘さが爽快です。佐々木さんは所有する約3ヘクタール(30,000m2)の土地のうち1ヘクタールを使ってスイカ、マクワウリ、冬はキャベツもつくっています。

新旭町では道の駅「しんあさひ風車村」(1993年4月登録)が開設された頃から、町のブランドのPRとして、「風車スイカ」の名前でスイカを売り出してきました。主な収穫期間は、7月下旬からの約1カ月が収穫の最盛期です。

収穫したスイカは作業場へ運ばれ、自動スイカ洗い機に通しきれいにしてから出荷します。自動スイカ洗い機は、親の代から使っており、年季が入っていますがまだまだ現役。主な出荷先は農協で、そこから市場を通して県内のスーパーを中心に販売されています。2020年は7月の長雨で、市場に出荷できないものが出てしまいました。

「市場に売りに出せないときのために個人で販売ルートを作っておくことも必要なのかなと。状況を他人のせいにせず、少しでも売るための努力を自らやっていかないといけません」。スイカの新しい売り出し方として、2020年から加工品開発への挑戦も始めました。

「取り組んだばかりでどうなるかは分からないですが、とにかく自分で思い付いたこと、できることをどんどんやるしかないなと思っています」。

農業と音楽の両立がライフワーク

佐々木さんは9月まではスイカとマクワウリの収穫をしながら、冬に育てるキャベツの育苗も行っており、夏が繁忙期となっています。夏は農業を軸に生活をしていますが、実は、農業の合間をぬって音楽活動もしています。

昔からプロのベーシストの夢を持っていたという佐々木さん。農家となった現在では、“耕すミュージシャン„という名前でYouTubeチャンネルを開設し、オリジナルソングを発信しています。

「僕は365日農業をしようとは思っていなくて。農業と音楽、自分にとってはどちらも大事ですから両立させたいんです」

夏は農業、冬は音楽活動を中心にしながらバランスをとった生き方を実現させています。

「音楽の現場で『農業やってます』と話すと、皆さん目の色が変わるんです。特に女性は食に関することへの興味や関心が高いと感じます。親が農業をやっていた頃に比べて、女性にとって農業が注目の的になっているのに驚きました。“汚い・きつい„ではなく、“おしゃれ・楽しい„というイメージを持ってもらえたらと思っています」

“農業で生計を立てながらミュージシャンの夢を叶えて生きる„。そんな佐々木さんの活動は、従来の農業のイメージを変える新しい農家のスタイルになるかもしれません。

縁側にスイカ縁側にスイカ、日本の夏の風物詩。

この農地を開拓した両親への恩返し

現在の佐々木さんの農地は、約60年前に国の事業で、長野県飯田市から開拓者として移住した両親が雑木林を切り開いたもの。スイカやキャベツなど、野菜の栽培に精力的に取り組み、この地を切り拓いてきました。当時の移住者で今もこの地に残る家は数軒だそうです。

「子どもの頃は夏に親の手伝いをさせられるのが嫌で仕方なかったです。農業に魅力を感じられませんでしたし、その土地から一切離れられないというイメージがありました」と振り返ります。家を継ごうという意志はなく、プロのベーシストを夢見ながら高校の体育教師になり、30代はネットワークビジネスで生計を立てていました。農業を始めたのは2009年頃のこと。

「ネットワークビジネスの経営が上手くいかず親に助けてもらったこともあったので、恩返しのつもりで始めました。自由な生き方を求めて家を出ていろいろやってきましたが、夢を引きずりつつも家に戻って農業をしている今が、一番自由な気がしています」

これまでテレビも含めて何度か取材を受けてきた佐々木さん。メディアに出ることで、新旭町のスイカの認知度を上げることに加えて、農業と音楽を両立する自身の活動を広く伝えようとしています。

「今の自分は、農地も農協との信頼関係も含めて、全部両親がつくってくれた恩恵を受けているだけです。加工商品もそうですが、なにかプラスアルファのことができるようにしていきたいですし、自分のスタイルで農業をしていきたいです」

開拓者2世の佐々木さん。そのDNAを受け継いで今、「農業」の新境地を開拓しています。

重量感のある大玉スイカ重量感のある大玉スイカは台車で運ぶにも一苦労

スイカを抱える佐々木さん「人間が食べても甘いものは動物が食べてもおいしいですからね。サルやイノシシに食べられることが多くて悩まされます」と佐々木さん。野生動物と闘いながらも、ずっしりと甘みの詰まったスイカづくりに励んでいます。

(取材日:2020年7月31日)