産地レポート

産地レポート ジビエ

自然の恵みを味わう"滋賀ジビエ"

「ジビエ」とは、フランス語で野生の鳥獣のこと。
シカ、イノシシ、ウサギ、鳥類など。飼育された動物とは異なり、野趣あふれる自然の味わいが魅力。フランスでは高級食材とされています。

豊かな自然に恵まれた滋賀県には、多くの野生動物が生息しています。中でもシカは県の全域に生息していますが、増えすぎて農作物等に被害を与えています。

日野町猟友会吉澤さん

滋賀県蒲生郡日野町の日野町猟友会、吉澤郁一会長は話します。

「滋賀県全域で、6万頭弱のシカがいますが、適正な数は4万頭と言われています。増えすぎたために食料が減って、農作物を荒したり、植林した木の皮を食べたりして、農業、林業に被害が出ているのです。また、イノシシも増えています。私たちはこうした有害動物の駆除のために山に入って狩猟をしています」

猟犬とともに山に入り、犬の習性を利用してシカやイノシシを見つけます。
「犬が追いこんでくるポイントでじっと待ちます。獲物の姿が見えたら初めて撃ちます。多いときは5~6頭も取れることがあります。仕留めた獲物は川の水で冷やします。自分の体温で肉が焼けてしまうからです」。
仕留めた獲物は解体し、ジビエとして出荷しています。

解体されている鹿

「シカはフレンチのシェフと連携し、『日野天然鹿』として出荷しています。また大手カレーチェーンにもシカ肉を出荷しています。さらに町内学校給食へもシカ肉を供給しています。私たちは農業、林業の被害を防ぐためにシカやイノシシを駆除していますが、肉が有効に利用されれば、生き物の供養にもなると思います」

大手カレーチェーンでは滋賀県限定の「シカ肉カレー」や「竜田揚げ」が人気メニューになっています。
また「獣美恵堂(ジビエどう)」の名前で味噌煮、大和煮の缶詰、ソーセージなど、加工品としても販売しています。
さらにイノシシ肉も出荷しています。
「シカは薄く切ってしゃぶしゃぶで食べてもおいしいです。イノシシは焼肉や牡丹鍋ですね」

日野天然鹿の大和煮

「3月15日から11月10日までの有害駆除のシーズンに、日野町ではシカ400頭、イノシシ20頭を獲っていますが、動物の増えるスピードには追いつきません。ハンターも高齢化していて、後継者がいないのも悩みです。自然のバランスを維持するためにも、若い方に興味を持っていただきたいですね。将来は地域のお肉屋さんで、牛、豚と一緒に鹿やいのししも並ぶように、と考えています」

家畜にはない、しっかりした歯ごたえと独特のうまみが魅力のジビエ。自然の恵みに感謝しつつ味わいたいものです。

(取材日:2013年12月2日)