産地レポート

「近江飯ファーム」代表理事の川崎さん

産地レポート
赤丸かぶ

赤丸かぶ

~訪ねた人:農事組合法人「近江飯(おうみい)ファーム」代表理事 川崎さん~

艶やかな紅色が美しい湖北の冬の名産、赤丸かぶ。
しゃきしゃきした歯ごたえと甘味を味わってください。

赤丸かぶの畑で。「近江飯ファーム」代表理事の川崎さん。

集落の田は集落で守る

12月、滋賀県でも雪がちらつき始める頃、琵琶湖の北東部の米原市内では地域の伝統野菜、赤丸かぶの収穫が始まります。赤丸かぶは、紅色に輝く真っ赤なかぶらで、地元では昔から漬物用として使用されてきました。その収穫風景が見たくて、米原市にある「近江飯(おうみい)ファーム」を訪ねました。

「米原周辺は昔から"かぶら"の栽培が盛んなんですよ。古くは約240年前、彦根城内の庭園で発見された"小泉かぶ"というのがありますし、明治初期には小泉かぶを改良した"入江かぶ"というのもありました。この赤丸かぶは、そのようなかぶら栽培の伝統の中から生まれたもので、昭和の初め頃から栽培が始まったといわれています。うちでは現在、約30a作っています」

赤丸かぶ 艶やかな紅色が印象的な赤丸かぶ。

そう説明してくださるのは、「近江飯ファーム」の代表である川崎さん。この「近江飯ファーム」は、飯(い)地区の農業者が設立した農事組合法人。農業従事者の高齢化に伴う人手不足は滋賀県でも深刻な問題になっていますが、この飯地区もその一つ。集落内の農業者が激減していくなかで、「集落の田んぼは集落で守っていこう」との考えのもと設立されました。

「利益としての農業の追求はもちろん大事ですが、それより私たちが目指したのは"財産を集落みんなで守り、継承する農業"です。現在、ファームが担っているのは、集落内の農地面積29haのうち、約86%にあたる25ha。それを43人の組合員でさまざまな作物を効率よく作付け・栽培・管理しています」

ファームでは現在、春夏には米や大豆、トマトなどを、秋冬には小麦やブロッコリー、赤丸かぶなどを栽培しています。このようにさまざまな作物を栽培することで、ひとつの作物が不作に終わった場合のリスクを軽減できますし、通年で一定の作業量を確保し、安定した就労機会を組合員に提供できるようになったともいいます。

「集落内に加工場も設け、組合員の手で赤丸かぶの漬物なども作っているんですよ。また、減農薬などの基準を厳しく定めた滋賀県の『環境こだわり農産物』認証を受けています。口に入るものですからね、自分たちが安心して食べられないものは、人にすすめられないでしょう」

甘味があるので生食でサラダにも

さっそく川崎さんと2人の女性組合員の方(川崎さんの奥さまと牛尾田さん)とともに赤丸かぶを見に行くことにしました。畑はファームの事務所のすぐそば。うっすら雪をかぶった広々とした畑には、少し赤みがかった葉を茂らせた赤丸かぶの畝がずらりと並んでいます。

軽く引っ張ると赤丸かぶはスポッと簡単に抜け、土の中から真っ赤な顔をのぞかせました。その色が、なんとも美しい! 濃い紅色がつやつやと光り、まるで宝石のよう。
「きれいでしょう?こうすると赤い色がつくんですよ、ほら」
そういって牛尾田さんが雪にかぶをこすりつけると、真っ白な雪が赤く染まっていきます。
「酢漬けにすると、赤丸かぶだけで濃い赤に染まります。」と牛尾田さん。

川崎さんを真ん中に、牛尾田さんと川崎さんの奥さま 川崎さんを真ん中に、牛尾田さん(左)と川崎さんの奥さま(右)。

赤丸かぶを横に割ると、中は芯を中心に赤い斑点が広がっています。寒さが強まるとより中の赤みが増してくるのだそう。赤丸かぶはその実の固さも特徴的で、漬物にすると歯ごたえがあり、とてもおいしくなります。また、サラダにしてもシャリっと歯ごたえがあり、しかもとても甘い!この甘さは、湖北の厳しい寒さと雪に耐えて育まれていくといいます。

加工場で漬物も作り、販売

赤丸かぶは、9月上旬から3回に分けて種まきし、12月くらいから順に収穫していきます。その間、間引きや害虫の駆除、追肥などさまざまな手間がありますが、これはほとんど女性組合員の仕事。最盛期には、1日200~300個の赤丸かぶが収穫できます。

葉も赤みがかっている 手で引っ張ると簡単に抜ける (左)かぶはもちろん、葉も赤みがかっている。
(右)手で引っ張ると簡単に抜ける。

手際よく赤丸かぶを収穫していくお二人。その様子を見ながら、「農家は女性がしっかりしとらんとあきませんねぇ。うちのファームでも14名が女性なんですが、加工作業など、女性の力が欠かせません。ちなみに、このあたりは、山内一豊の妻、千代が生まれた場所。女性が賢く強いのは伝統なのかもしれんね」と笑う川崎さん。

十文字の切れ目を入れ、乾きやすくする 1週間ほど天日と風にさらした後、漬物にする (左)お尻に十文字の切れ目を入れ、乾きやすくする。
(右)1週間ほど天日と風にさらした後、漬物にする。

赤丸かぶは、一部は収穫して1週間ほど天日に干した後、集落内の加工場で漬けこみ、近くのスーパーや道の駅で販売しています。

「おかげさまで、赤丸かぶの栽培は年々増えています。数年前にはうちの赤丸かぶは『おいしが!うれしが!滋賀の恵み弁当』としてコンビニのお弁当にも採用されました。加工場も、今は漬物だけですが、何か他のものもどんどん創っていきたい。そしてファームが目指す"地域を活性化し、守る農業"を実現していきたいと思っています」

集落が一体となって新しい農業形態を目指す近江飯ファームの取り組みに、赤丸かぶは大きな戦力になっているようです。

(取材日:2011年12月26日)

■「近江飯ファーム」の問い合わせ先:0749-52-2424
■赤丸かぶに関するお問い合わせ:レーク伊吹農業協同組合経済部営農企画課(0749-52-6532)