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2018年4月の特集 とち餅【産地レポート】とち餅

産地レポート とち餅

奥伊吹スキー場をめざし、姉川をさかのぼると緑豊かな甲津原に辿り着きます。地域の入口には「甲津原交流センター」があり、とち餅を作る甲津原営農組合加工部のメンバーの拠点となっています。地域の特産品である、とち餅づくりが行われている現場にお邪魔しました。

栗のようなとちの実と皮。お皿の上段が
栗のようなとちの実と皮。お皿の上段が"きなこをまぶしたとち餅"、下段が"大豆あん入りとち餅"。

朝からキビキビ働く5人の加工メンバーのみなさん

朝9時30分、センターの調理場に入ると、蒸し上がった餅米の甘い香りが立ち上り、そこには「甲津原営農組合加工部」の5人のお母さんたちがキビキビと働いています。餅米は餅つき器に投入され、あっという間につきあがり、次は、平餅用の台につきあがった餅米を手でのばし、年季の入った太い棒で餅をのばしはじめます。のばした後は、次々と小さくカットされ、その間、約10分。手際のいい作業は見ていて気持ちいいほど。
「甲津原営農組合加工部」は、昭和61年に特産品であるみょうがの漬物を作る加工部として発足。以前は「漬物加工部」と呼ばれ、主に地域で栽培される野菜の漬物を作り、各種イベントに出ていました。

平成9年の交流センター開設に伴い、イベントに出向く代わりに、センター内で販売する加工品を作るようになりました。漬物だけでなく、ご飯ものが欲しいとの声にお弁当や漬物寿司などのメニューを次々と開発し、平成21年にとち餅がメニューに加わりました。

とちの実と一緒に蒸し上がった艶があってもっちりした餅米。もちろん餅米は、滋賀羽二重糯(もち)を使用。
とちの実と一緒に蒸し上がった艶があってもっちりした餅米。もちろん餅米は、滋賀羽二重糯(もち)を使用。

餅つき器を手際よく操作して餅をこねる。
餅つき器を手際よく操作して餅をこねる。

平餅用についた餅を器用に四角く伸ばす。
平餅用についた餅を器用に四角く伸ばす。

在来のとちの実を集めて、手間ひまかけて食べられる実に

とち餅とは、とちの実を入れて作ったお餅のこと。香ばしい独特の風味と、わずかなほろ苦さを楽しめる素朴な味のお餅です。「昔は、家庭でとち餅を作っていた。とちの実はかさを増すために入れていたけど、今はどこも作らないから、お金を出して食べる贅沢品になってきたね(笑)。」とリーダーの山崎さん。
とちの実は皮が分厚く、苦みがあるため、皮むきとアク抜きの作業に手間がかかり、一般の家庭はもちろん、業者でも作るところが少なくなってきているそうです。

とちの実は、秋のお彼岸の頃からポロリと落ち始め、センター前にある大きなとちの木の実をお母さんたちが拾い集めます。スキー場の人や地域の人もそれぞれの地域にあるとちの実を集めてくれ、センターに持ち寄って、地域の特産品化をサポートしています。

センター前にある三角錐(すい)の木がとちの木。
センター前にある三角錐(すい)の木がとちの木。

姉川の澄んだ流水でアクを抜く。
姉川の澄んだ流水でアクを抜く。

集めたとちの実は、まず、お湯の中に入れて一晩置き、柔らかくしてから皮をむき、むいた実は姉川の流水に2~3日ほどさらしてアクを抜きます。その後、灰を入れたお湯に実を入れて柔らかくするのですが、この頃合いが難しいそう。「柔らかく煮すぎると実がくずれ、硬いと渋みが出るね」と山崎さん。
茹でた実はパックに詰めて冷凍しておき、とち餅を作るときに使っています。「昔の人はとちの木を大切にしていましたね。実を食べることができるから、切ったりしないで大切に守っていたのかもしれないね」と高橋さん。

「甲津原営農組合加工部」のみなさん(左から高橋さん、船川さん、草野さん、山崎さん、姉川さん)
「甲津原営農組合加工部」のみなさん(左から高橋さん、船川さん、草野さん、山崎さん、姉川さん)

加工部では、とち餅を使ったメニューが3種類あります。道の駅やスキー場、センターの喫茶などで販売している"大豆あん入りとち餅"、喫茶のぜんざいに入っている"平餅"、イベント時に作る"きなこをまぶしたとち餅"です。主に土日にオープンする喫茶で販売する"大豆あん入りとち餅"と"平餅"を作っていますが、漬物など他の商品も手作りしているため、お母さんたちは、ほぼ毎日、出勤しています。

「大豆あんって珍しいですね」と取材陣が質問すると、湖北地方の新たな特産にしようと頑張っている、お隣の柏原(かしわばら)の田園味噌加工グループから分けてもらっているそうです。やわらかなとち餅に包まれた、なめらかなあんは甘さ控えめで素朴な味わい。こちらは土日オープンの喫茶や道の駅で購入することができます。

"きなこをまぶしたとち餅"は、交流センターで季節ごとに開催されるイベントで、親子でとち餅作りが体験できるときのメニューです。とち餅を丸めて、きなこをまぶして、その場でいただくことができます。興味のある方は、ぜひ、参加してみてください。

5人で一斉に丸め始めると1ケース10分もかからないほど。まさに匠の技!
5人で一斉に丸め始めると1ケース10分もかからないほど。まさに匠の技!

とち餅の中に入っている大豆あん。
とち餅の中に入っている大豆あん。

たわしも重要な道具。粉を細かく落とせる。
たわしも重要な道具。粉を細かく落とせる。

美味しく食べて欲しいから、ひと手間かけて、心を込めて

お話を伺っている間も、お母さんたちの手は止まりません。おもむろに袋からたわしが出てきて、餅にまぶした片栗粉をたわしでササッと落とします。通常は手ではたいて粉を落とすのですが、専用たわしで落とすと粉がよく落ちて、食べたときも粉っぽくならないそう。確かに餅生地を食べたとき、なめらかな舌触りで粉っぽさがなく、とちの風味が舌にダイレクトに伝わる味わいでした。おばあちゃんの知恵と気遣いが1個にギュッと詰まっています。

とち餅作りについての意気込みをお聞きすると、「今までのことをコツコツとやり続けるだけ」と船川さん。「自然のものはありがたいです。粗末にせず、丁寧に1つ1つ心をこめて作ってます」と山崎さん。
自然の恵みと、お母さんたちの真心のこもったとち餅は、心を和ませてくれる温かな味です。

「甲津原営農組合加工部」が作る商品は「甲津原育ち」のシールが目印。
「甲津原営農組合加工部」が作る商品は「甲津原育ち」のシールが目印。

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