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産地レポート

タテボシ貝

たくさん獲れるんやから、ぜひ食べてほしい
琵琶湖固有の二枚貝、タテボシ貝

琵琶湖固有の二枚貝、タテボシ貝

村井裕治さん

タテボシ貝は、漢字では「立烏帽子貝」と書き、文字通り、平安時代に使われていた冠の立烏帽子(たてえぼし)に似ていることからついた名前。琵琶湖固有の二枚貝です。

 琵琶湖で生計を立てる漁師の中でも、セタシジミやカラス貝、タテボシ貝といった貝を中心に獲るのが「貝引き漁師」。この道30年の村井裕治さんは、朝5時に堅田港から愛船「速水丸」を出し、注文などに応じて琵琶湖全体で漁をしますが、現在は基本的にタテボシ貝を獲りたい時は近くの泥地で漁を、セタシジミを多く獲りたい時は砂地のある彦根地先まで、約1時間、船を走らせているそうです。

琵琶湖の食べもんが支える重労働

マンガンと呼ばれる貝引き漁具の総重量は約70キロ。これを船のへりに引っかけ、テコの原理で操ること1時間に約5回。途中、絡んだ網や水草を外す作業が入るとはいえ、これを5~6時間繰り返すというから、驚きの重労働です。<網だこ>といわれる節くれだった指が、その過酷さを物語っています。「琵琶湖のもんを食べて育ってるから、体は丈夫。」と村井さん。

貝引き漁は重労働

<網だこ>といわれる節くれだった指

砂地や泥地をマンガンでかくと、網に入るのは、7割がタテボシ貝、1割強がセタシジミ、残りがカラス貝やタニシ。昼過ぎには寄港し、これらをふるいにかけて、選別します。多い時は、プラスチックのトロ箱に20杯ほどのタテボシ貝が獲れます。

獲ったその日にボイルしてむき身に

鮮度が命。休みは風の強い日と雨の日だけ。

貝は鮮度が命。だからこそ、疲れた体をひきずって、港に隣接する作業場で、タテボシ貝をむき身にするまでを一気にやってしまいます。コンテナ5杯分を、直径1mを超える大釜でボイルし、円筒形の網を回転させて、むき身と貝殻にふるい分けます。

漁は日曜も祝日も関係なく、風の強い日と雨の日だけが休み。「晴れが続くと、さすがに疲れがたまりますね。」と苦笑いする村井さん。新鮮なむき身は、直接注文を受けて、漁港から直送することも増えているそうです。

琵琶湖のもんはおいしいし、体にもいいよ

「昔は京都の市場にも普通に出回っていたので、年配の女性からよく『懐かしい』といわれます。」父の速見さんが脱サラで漁師を始めた時は全盛期。まだ好調が続いていた30年前、裕治さんも船に乗るようになりました。漁獲量が減った時代もありましたが、最近は少しずつ増えています。

「ただ、年々食べる人が減っています。私は、殻付きで、酒蒸しにしたりしますが、むき身をそのままポン酢とカツオ節で食べてもいいし、つくだ煮、ヌタ、てんぷらもおいしい。鉄分も亜鉛も豊富です。せっかく豊富に獲れるんやから、食べてもらわな。」と村井さん。母・さと枝さんのつくだ煮を味見させてもらいました。身のしっかりした歯ごたえ、ショウガ、タカノツメがぴりっと効いた、濃いめの味付けは絶品です。

タテボシ貝のつくだ煮

湖上から見る朝日に支えられて

現在、堅田の貝引き漁師は、村井さんを含め12~13人。ほとんどが60代以上という高齢化も心配されるところです。

「なんやかんやいっても、この仕事が好き。」と村井さん。「一番うれしいのはもちろん大漁の時。」と笑いながらも、「船の上で夜明けを迎えて、冬の雪山に朝日が当たった景色や、春の満開の桜を湖上から眺めていると、ほんまにきれいやな~と思います。自然が好きですから。」と顔をほころばせていました。村井さんの獲るタテボシ貝には、琵琶湖とその恵みへの〝愛〟が詰まっているような気がします。

堅田の漁港

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