産地レポート

酒米

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酒米

酒米

~訪ねた人:農事組合法人楽農ファーム吉田 代表理事 高橋さん~

農業、酒米を通じて、
地域のためにさらなる展開。

岡村本家前で吟吹雪の束を手にする高橋さん

酒造りに使われる「酒米」とは

滋賀県では質の高い「近江米」と酒蔵が豊富な水資源を活かしながら、 現在でも39軒の日本酒を仕込まれています。
酒造りに使われる米は「酒米」「酒造好適米」と呼ばれ、私たちが普段目にする「うるち米」と比べると大粒で、米の中央に「心白(しんぱく)」 という白い曇りがあることが特徴。また、稲穂も長く、植付けや刈り入れ時期も異なります。

吟吹雪の玄米吟吹雪の玄米。ぷっくりとした米粒の中心に「心白」が見える。

      

なかでも「玉栄」と「吟吹雪」という2種類の酒米は滋賀県が原産地。 それぞれ県内を中心に各地の酒蔵で採用され、自慢の銘酒へと生まれ変わっています。

米どころ「吉田」での酒米づくり

「ここ吉田は米どころで、昔は『善田』と書いたそうです。」

豊郷町吉田にて集落の農業を支える「農事組合法人楽農ファーム吉田」代表理事の高橋康夫さんはそう地元を紹介されます。

なんでも岩倉川・小増川・宇曽川という3本の川が集まる場所で、粘土質の良い土の田んぼが広がるのだとか。また、鈴鹿山脈の伏流水で水にも恵まれていて、本当によい米ができるのだそう。
そして、吉田は安政元年(1854年)創業の酒蔵「岡村本家」がある土地柄。

岡村本家の銘酒ずらりと並んだ岡村本家の銘酒。

楽農ファーム吉田は、平成14年に営農組合として発足。地域の放棄田の耕作を担い、平成20年には法人化を実現しました。

酒米の栽培は、営農組合として活動を始めた当時から。岡村本家で使う酒米づくりを社長の岡村さんから勧められ、最初に「玉栄」の栽培にチャレンジ。
しかも、農薬や化学肥料を通常の半分以下に抑えて作る「環境こだわり農業」を実践。

高橋さんは「やっぱり琵琶湖のため」とその取組をふりかえり「酒米の環境こだわり農業は、うるち米と同じようにはいかず、
  除草剤散布のタイミングがうまくいかない。
  最後は手押しの除草機を使って人海戦術ですわ。」と大変な作業でもどこか楽しそう。

平成21年からは「吟吹雪」の栽培も開始し、平成24年には酒米の作付け面積は10haにまで広がりました。

吟吹雪の稲穂酒蔵に置かれていた吟吹雪の稲穂。長い穂の先にはたっぷりと籾が付き、重そうだ。
130~140cmにもなる稲穂の収穫は10月初旬ごろ。

玉栄と比べると吟吹雪はまだ収穫量が少なく「酒米には酒米の作り方があるようで、もっと勉強してやっていかんと」と良質の酒米づくりにますます熱意を燃やしておられます。

酒蔵との二人三脚、さらなる発展を目指して

「岡村本家があるおかげで、こうやって地産地消も実現してる。作った酒米がお酒になって自分たちでいただけるのはありがたいで。」と高橋さん。

日本酒の仕込みから出たおいしい酒粕も、無駄なくしっかり活用。楽農ファーム吉田自慢の白ウリで粕漬「金亀漬け」が生まれます。
「お米もいいし、酒蔵の搾り方もいいし、ここの酒粕はうまいんやで!」

そして、次の目標は酒米の米粉。
「玉栄」は、収穫の適期見極めが難しく、逃すと乾燥しすぎて米の内部にヒビが入る「胴割れ」が起きてしまい、酒造り用に精米したら割れてしまい、出荷できないのだそう。

「たくさん胴割れが出てしまうと、売れないし、食べようにもおいしくないし、困った。」ということで、いざというときの対処法に、またいっそうの酒米の魅力を求めて、米粉に加工し、米粉パンをつくるのだと構想されていました。

「農業は楽ではないけど、"楽しく"農業をしようやないか!と私たちは思って活動しています。地域の中でにぎやかにコスモスフェスタをやったりね。地域のために、これからもさらなる展開を考えていきたいです。」

(取材日:2013年3月14日)