産地レポート
杉谷とうがらし
杉谷とうがらし
~訪ねた人:杉谷伝統野菜栽培部会 部会長 木村さん~ほのかな甘みがおいしい杉谷の伝統野菜、杉谷とうがらし。
一つひとつ個性的な形もチャーミングです。
ここでしか採れない「杉谷」の伝統野菜
各地域には昔から作り継がれてきた野菜があります。
ここ、甲賀市甲南町杉谷にも「杉谷なすび」「杉谷とうがらし」「杉谷うり」の3種類があり、現在「杉谷伝統野菜」として地域の直売所などを中心に販売されています。
(左)「杉谷なすび」
(右)「杉谷とうがらし」
ひとつの地域でこんなにも品種が残っていたとは驚きです。杉谷地区には何か秘密があるのでしょうか?
杉谷伝統野菜栽培部会 部会長の木村茂良さんに杉谷地区の特徴を伺うと、それは、杉谷地区周辺の独特の土壌にあるとのこと。
「信楽は砂地だし、土山は黒ボク、甲南は重粘土、と言いますけどね、ここ杉谷は黒っぽい粘土質に砂が混じった独特の土。美味しいからうちでも作りたいと言われる時もあるけどね、別の地域で育てると形も違うし、小さいものにしかならなかったりするみたいですよ。」
と木村さん。
杉谷地区でのみ栽培されている杉谷伝統野菜。「数軒ほどですけれど、集落内で作り続けておられた方があったんですよ」と木村さん。
11年ほど前に、まずは「杉谷なすび」をメインに栽培を開始。地域を盛り上げるために、ブランド化を目指しました。
「ぼくもね、種を分けてもらって作り始めました。」
そして7年ほど前から「杉谷とうがらし」にも注目。細々と作られていたものを改めて取り上げての生産が始まりました。
伝統野菜復活!「杉谷とうがらし」
「杉谷とうがらしは、生でも甘みがあって、辛いものはほとんどない。『おいしがうれしが』の取組みも始まって、人気も上がってきましたよ。」と嬉しそうな木村さん。
「生でかじってみて」と採りたてを手渡され、一口いただくと、みずみずしい歯ごたえ。柔らかい甘みに思わず「これがとうがらし!?」
くの字に曲がって、指4本分ぐらいが杉谷とうがらしの良い形
そんな杉谷とうがらしの栽培には、水管理と、肥料やりが欠かせず「水不足だと固い実になってしまう。それに"肥え食い"やな。花が付かなくなってくるので、月に2回は追肥をします。」
種播きは4月初旬頃、7月初旬には収穫できるようになり、霜が下りる頃まで収穫が続きます。
「収穫は夜明けとともに収穫するので、夏場は寝坊しないように起きるのが大変ですけどね。夜露にかかってうまみが蓄えられるのか朝から採った方が味がいいんです。」3カ月ほどはずっと早起きの日々が続くのだそうです。
「いい形で、良い大きさのものが採れたときが楽しいね」と丹精込めた木々を見つめる木村さんは、本当に楽しそう。
(左)軽く上に上げるだけで収穫できる。
(右)木村さんは3種類の杉谷伝統野菜すべてを作っておられます。
「在来の種で、品種改良していないから病気には弱い。
JAや県の普及員さんにも相談しながら、もっと地域内で栽培を定着させようとしてるんですよ。」
杉谷伝統野菜のおいしいメニュー
なんと、木村さんの奥さまが、杉谷とうがらしや杉谷なすびを使ったメニューをいろいろご準備くださっていました!
杉谷とうがらしのメニューいろいろ
「果肉が柔らかいのでね、あっさり火を入れるだけでいいの。火を入れすぎるとぐちゃっとなるんよ」と奥さま。
「素揚げにして醤油で食べても、塩昆布とからめてもおいしいね。」
おっしゃるように、杉谷とうがらしの料理の数々は油ともお醤油とも相性抜群!ご飯が何杯でも食べられそうなおいしさです。
生産農家の女性のみなさんで、調理メニューの試作を行ったりして、さらに杉谷伝統野菜を味わう楽しみを広げようと取組んでおられるのだそう。
甲賀市や湖南市の直売所で買うことができる。
「旬のものを旬の時に食べる。それが一番おいしいし、毎日食べてても飽きないほどやね」と木村さん。
杉谷地区の自然の恵みをいっぱい集めた杉谷伝統野菜。夏の定番になりそうですね。
(取材日:取材日:2012年10月5日)