産地レポート

滋賀県近江八幡市の大中でブロッコリーを栽培する坪田さん。

産地レポート
ブロッコリー

ブロッコリー

~訪ねた人:「JAグリーン近江・大中ブロッコリー部会」部会長 坪田さん~

木枯らしの中でじっくり育てたブロッコリー。
硬くみずみずしく、軸までしっかりおいしいですよ!

滋賀県近江八幡市の大中でブロッコリーを栽培する坪田さん。

約40年前からブロッコリーを栽培

栄養たっぷりな緑黄色野菜として、おなじみのブロッコリー。古くからブロッコリーを栽培されているのが、琵琶湖の内湖を干拓してできた大農業地帯、大中で野菜農家を営む坪田さんです。

「大中には稲作を目的に家族で入植したんですが、昭和45年に国の転作政策で野菜に転向。夏はスイカ、冬はキャベツを作るようになりました。ブロッコリーは、当時、懇意にしていた種苗会社の社員に、栽培してみないか、とすすめられたのがきっかけです。確か昭和47年頃だったと思うから、もう40年近くになりますね。もしかすると、滋賀でブロッコリーを本格的に栽培したのはウチが最初かもしれません(笑)」

以来、秋冬野菜として約3ヘクタールのブロッコリーを生産。近年ではブロッコリー消費の向上に伴い栽培農家も増え、大中では現在13軒が栽培。栽培面積は計11haに及んでいます。

栄養たっぷりな緑黄色野菜として、おなじみのブロッコリー

手のひらサイズが収穫の目安

ブロッコリーの苗は7月下旬から8月にかけてハウスで育成されます。お盆過ぎから9月下旬にかけて、早生種(10月下旬~11月中旬に収穫)、中手種(11月下旬から1月中旬に収穫)、晩生種(1月下旬から3月上旬に収穫)というように、収穫時期に合わせて品種を変え、順に畑に定植されていきます。

取材は2月の下旬。あいにくの雨で、数日前に降った雪も消えていました。

「今年はそろそろ収穫も終わりだね」。そういいながら、坪田さんは畑に入り、大きそうなブロッコリーを数個、包丁で切ってくれました。

収穫風景。畝間を移動する台車は坪田さんの手作り 手で硬さや大きさを確かめて収穫していく (左)収穫風景。畝間を移動する台車は坪田さんの手作り。
(右)手で硬さや大きさを確かめて収穫していく。

ちなみに、ブロッコリーの食べる部分は、小さな蕾(つぼみ)の集合体。花蕾(からい)と呼ばれ、そのまま成長し続けるとアブラナのような花が咲きます。

その花蕾ですが、見るとそれぞれ色が微妙に違うような。

「少し紫がかっているでしょう。これはアントシアニンが含まれている品種です。こっちの緑のものは、アントシアニンレス(含まない)のもの。消費者にはレスのほうが好まれるようですが、茹でるとどっちも鮮やかな緑色になります」

品種は「はればれ」 みずみずしいブロッコリー。品種は「はればれ」。
アントシアニンが含まれているので少し紫がかっている。

収穫したてのブロッコリーは、花蕾も軸もしっかり硬くて元気!

「うちのブロッコリーは軸まで甘いよ!私は軸のほうが好きですね。茹でてそのままサラダにしてもいいし、和え物にしてもおいしいですよ」

ブロッコリーの収穫は手のひらサイズが目安。一つ一つ手でさわり、硬くしっかりしたものを確かめながら採っていきます。同じ畝に植えても成長の度合いは違うから、1つの畝を毎日行ったり来たり。けっこう手間と労力がかかるといいます。

「秋は暖かいから成長が早くて3日もたてばすぐ大きくなってしまう。ブロッコリーは蕾だから、うかうかしていると花になってしまい、やわらかくなってしまうわけです。これでは出荷できない。 反対に冬は寒くて成長が遅い。でも、小さいからと放っておくと、これまたやわらかくなってしまいます」

雪や風の被害を受けやすい

坪田さんいわく、木枯らしが吹く頃のブロッコリーが甘く、おいしいのだそう。ところがここ2~3年、2月以降に収穫するブロッコリーの出来があまりよくないといいます。原因は予想以上の大雪のせい。

「ブロッコリーの花蕾は葉で守られており、ブロッコリーの成長には葉がとても重要なんです。雪が多く降ると重みでブロッコリーの葉がはがれてしまう。すると花蕾が低温障害を起こし、茶色くなって、出来の悪いブロッコリーになってしまいます」

ブロッコリーをチェック 収穫したブロッコリーをチェック。

また、肥料のやり方も難しく、窒素分が多いと軸ばかり大きくなり、苦みを感じる味になるといいます。

生育には農薬や化学肥料をなるべく使わないように配慮。栽培に厳しい基準を設けた滋賀県の『環境こだわり農産物』の認証を受けています。また、大中は近江牛の肥育が盛んなところなので、肥料には牛ふんたい肥も活用しているのだそう。

「ブロッコリーは気候の影響をすぐに受けるので、年により収穫量が変動するんですよ。40年近く栽培していますが、毎年1年生の気分です。品種もいっぱいあるし、病気に強いものもある。でも、育てやすいのはおいしくないね」と笑う坪田さん。

いただいたブロッコリーを家で茹でてみたところ、坪田さんの言葉通り、確かに軸は野菜の旨みがぎゅっと凝縮したようで、「軸のほうが好き!」という気分に。

サラダはもちろん、シチューやグラタン、中華料理などに大活躍のブロッコリー。ぜひ安全・安心な、「軸までおいしい」滋賀県産を味わってください。

(取材日:2012年2月23日)

■滋賀県産のブロッコリーの販売場所:量販店、直売所など